神奈川県庁で使われていた大量の個人情報を含むハードディスク(HDD)が外部に流出した事件で、HDDの処分を請け負った会社の元社員(51)が6月9日、窃盗罪で懲役2年執行猶予5年(求刑懲役2年)の有罪判決を受けた。
「売れるのにもったいない」。そんな出来心による犯行は、HDDなどの記憶媒体を処分する際の落とし穴の存在を世にさらし、大きな衝撃を与えた。この問題を発覚当初から報じてきた記者が、取材現場で見て、感じたこととは――。
県の内部文書「本物だ」
昨年11月25日夜。神奈川県庁の取材を担当する私の元に、一通のメールが届いた。
個人情報を含む県庁の内部データが不正流出している。ファイル数は5千万、容量にして20テラバイト以上――。短いメールに、そんなことが書かれていた。末尾には携帯電話の番号も記されていた。
正直に言えば、メールを読んだ直後はピンと来なかった。5千万ファイル、20テラバイトという数字の大きさに、実感が伴わなかったのだ。
仕事で送信するメールの容量は、写真などを添付しても数メガバイトがせいぜい。一方、20テラバイトは2千万メガバイトに当たる。そんな膨大な量のデータが県庁から外部に流出したら、とても隠し切れるものではない。だが、一切聞いたことがなかった。
記者歴20年余の経験と常識が邪魔をして、連絡するかどうか一瞬迷った。だが「もし本当だったら……」。興味がまさった。
相手に電話をかけると、ボソボソとした語り口の男性(以下、A氏)が出た。詳しい話を聞いてから判断しようと考え、翌日に会う約束をした。
11月26日、A氏はHDD1個とパソコンを持って現れた。パソコンが立ち上がるのを待っていると、A氏が30枚もの紙の束を差し出してきた。HDDに入っていたデータの一部を印刷したものだという。
それを見た瞬間、言葉を失った…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル