「特別じゃない日」をテーマに描き続けている漫画家・稲空穂さん。
ふとしたきっかけでつながっていく、日常の中の小さな幸せを描いたシリーズだ。
描く上で心がけているのは「目の前の人や出来事は一つのくくりに収まらない」ということ。
たとえば、イライラしているサラリーマンがいたとする。
もしかしたら、上司に怒られた直後かもしれない。
思春期の娘とケンカした後なのかもしれないし、つまずいて転んでしまったのかもしれない。
人は見えているところだけでは判断できない。
そんな視点を提供できたらいいな、と思いながら描いている。
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転機となった漫画がある。
2019年8月に発表した「スマホ世代」というタイトルの作品だ。
登場人物は、夏祭りに来た男の子と父親。
お面を買って、ヨーヨー釣りをして、リンゴあめを買って、くじを引いて。
その間、ずっとスマホを握りしめて画面を見ている。
「まったく、いまどきの子どもは……」と思いながら読み進めると、次のコマで見方が一変する。
花火が上がったことに気づい…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル