ゼウスよりたった一言「おまえしだいだ」 兵庫の高3、連歌賞で大賞

 五七調の言葉を重ねていく連歌(れんが)の作品を審査する「第24回酒折(さかおり)連歌賞」(山梨学院大など主催)で、兵庫県立姫路南高3年の小田愛瑠(あいる)さん(17)が大賞・文部科学大臣賞を受賞した。あなたの物語というテーマに、ギリシャ神話の神ゼウスを登場させる独特の着眼点が高く評価された。

 2年生だった昨秋、国語の授業で連歌賞へ応募することになった。1時間の授業の間に、五・七・七の片歌(かたうた)を考えた。小田さんを含め生徒たちに連歌をつくった経験はなかった。

 酒折連歌賞は「問い」にあたる五つの片歌から一つを選び、「答え」の片歌を応募する形式。小田さんは問いの片歌に「物語あなたのページをひらいてみれば」を選び、それに続く「答え」を考えた。

 自分の物語が記された本を想像した。「過去のページには私が関わってきた人たちとの記憶が書かれている。未来の章は白紙。現在のページには、見開きで『おまえしだいだ』と書かれているというイメージでした」。考え込むこともなく片歌が浮かんだ。

 ゼウスよりたった一言「おまえしだいだ」

 3作応募したが、最初にできたこの片歌が一番のお気に入りだった。

 「自然に浮かんだ」という小田さんに、つくった時の気持ちを振り返ってもらった。

 「自分が何になりたいのか、何をしたいのか、まだわからない今、未来を見ることは怖い。でも、進路を考える時期にきて、周りに流されるのではなく、前向きに決断しなければならない。すべては『おまえしだいだ』と突きつけられている、という気持ちだったと思います」

 「おまえしだいだ」の声の主は、誰もが納得する「人外」の存在だと考えた。ギリシャ神話の全知全能の神「ゼウス」が思い浮かんだ。「これまでに読んだ本に出てきたかなあ、という感じ。私、あまり神様の名前を知らなかったので、知っていた『ゼウス』にしました」

 この片歌が、小中高生の作品を対象とした「アルテア部門」の大賞・文部科学大臣賞に選ばれた。選評で「スケールの大きな時間感覚が表現されている」「全知全能の神の言葉が記されているというユーモアと俯瞰(ふかん)した視点がとても魅力的」と評価された。

 「母にも『発想が周りと違うけど、それがいいんじゃない?』と言われました。自分としては周りと違うとは思っていなかったので、そういう評価を聞くと『ああ、そうなんだ』と感じました。気に入っていた片歌なので、評価されたことはとてもうれしいです」

 高校で始めたバドミントンの部に所属し、理系分野の大学への進学を考えている。「国語も好きな教科。同じようなコンテストがあったら、また挑戦してみてもいいかな、と思っています」(宮沢崇志)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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