視力を矯正したり、瞳の色を変えてオシャレを楽しんだりするソフトコンタクトレンズ。それを、指で直接触らずにつけ外しできる器具があります。
「meruru(メルル)」
ピンセットに似た形の器具です。
横浜市に本社がある「メディトレック」という会社が開発したのですが、2013年に発売されてから8年で出荷数が30万個を超えました。国内だけでなく、ドイツや中国、韓国、そして台湾などにも出荷されています。
「こんなもの売れないよ」
「だれも買わないよ」
そんな酷評も浴びてきました。でも、57歳で起業した社長の斉藤和子さん(66)は、あきらめませんでした。その原動力は、コンタクトの検査員の仕事をしていたときに感じていた悔しさ、です。
悔しくてたまらない
斉藤は商業高校を卒業後、しばらくメガネの販売チェーンなどで働く。そして10年間、専業主婦をした。
子育てが一段落し、コンタクトの検査員として東京の眼科で働き始めた。その人にあったコンタクトを探し、つけ外しの指導をする仕事である。
コンタクトを目につける練習にも付き添った。練習は、たとえばこんな感じである。
――斉藤が、コンタクトをつけたいとやってきた人に言う。
「手でコンタクトを入れてみましょう」
やってきた人は、人さし指ですくったレンズを、おそるおそる自分の目に近づける。
「そう、その調子」と斉藤。
だが、手が止まる。
「がんばれ」と斉藤。
無事にコンタクトを目に入れることができると、その人は笑顔になって言う。
「わっ、こんなに見えるんだ」――
ほとんどの人は、すんなり入…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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