丸みを帯びていてなんだか絵みたい。そんなタイ文字に魅了された2人の日本人女性がファッションブランドを立ち上げた。タイ文字を生かしたデザインに日本の「Kawaii」文化を掛け合わせ、新たなブームを起こしたいという。
英語のアルファベット表にあたるタイ語の「コーカイ表」は全部で42文字。よく見ると、どれも丸っこい曲線部分があり、一見すると似た形の文字もちらほら。
「ひらがなに似ていると思いませんか」。ファッションブランド「pecomushu(ペコムシュ)」代表の青野愛さん(39)=大阪市城東区=は言う。
「わ」と「れ」、「め」と「ぬ」の見分け方が日本語を学ぶ外国人にとって難しいのと同じように、タイ文字も区別がつきづらい文字があるという。
「間違い探しみたいですよね。でも、ビジュアルがとにかく可愛いんです」
そう熱弁する青野さんだが、実はまだタイに行ったことがない。最近までタイへの興味も全くなかったという彼女が、なぜブランドを立ち上げたのか。
ドラマのとりこに
きっかけはドラマだった。コロナ禍が始まった2020年、日本では韓流を始めとしたアジアドラマのブームが起きていた。
タイのドラマにはまっていた友人でフリーデザイナーのkonoka.さん(34)=東京都大田区=の勧めで初めて見た。街並みやイケメン俳優たちに、とりこになった。
ある俳優のツイッターをのぞいてみると、見たことのない暗号のような文字が並んでいた。読めない。もちろん意味もわからない。でも思った。
「可愛い!」
青野さんは直感的に、このかわいらしいタイ文字を生かして何かができないかと考えた。
「海外でよく間違った文章の日本語が書かれたTシャツを着ている人がいますよね。それって変だけど、見ていて面白い」と青野さん。そんなイメージでタイ文字も広められないか――。
konoka.さんに声をかけ、2人でブランド「pecomushu」を立ち上げた。昨年8月のことだ。
Tシャツ、帽子、ステッカー、キーホルダー……。これまでにつくった商品は「かわいい」「オタク」など、世界でも通じる日本語をタイ文字であしらっているものが多い。
現地の子どもと「虹」のコラボ
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「せっかくタイに関わるなら現地にも貢献したい」。当初から2人はそう思っていた。
タイ中部のカンチャナブリに孤児や国籍のない子どもたちの生活・教育支援をする「虹の学校」があることを、konoka.さんは知っていた。自身の母親がそこに通う子どもの里親になっていたからだ。
高知県の寺が運営する施設で、校長も日本人女性だった。オンラインで子どもたちのことを尋ねると、絵を描くのが好きな子が多いと教えてくれた。
それなら、と26人の子どもたちに「虹」を描いてもらった。
象の鼻から虹が飛び出す絵、仏らしきものが魔法で虹を作っている絵、虹のハートの中に人々の暮らしを描いている絵――。
個性あふれる26種類の「虹」をコラージュしてできたアートを、白いTシャツの裏面にプリントした。表面にはタイ語で「きれいな虹」と書いた。
コラージュを担当したkonoka.さんは「アートを通じて、子どもたち一人ひとりの夢につながるような発信を続けたい」と語る。
Tシャツは「虹の学校」の子どもたちに届ける予定。3月下旬から1枚6800円(税込み)で売り出し、すでに十数枚売れているという。売り上げの一部は学校に寄付する。
■ブームを起こしたい!…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル