3月9日午後、札幌大学教授の岩本和久(54)は学長室に呼ばれた。学長の大森義行(64)と副学長の林研三(71)が待っていた。
岩本の専門は、ロシア文学。2日後、岩本が企画したパネル展「疫病とロシア文学」が、札幌市中心部の書店で始まる予定だった。
学長は岩本に告げた。
「予測不能なことが起こるかもしれない。世情の関係上、ここは一時延期していただけないか」
2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻の後、東京のロシア食品専門店で看板が壊される嫌がらせがあった。企画展で何かあれば大学の責任になる――。それが、学長と副学長の共通認識だった。
企画展は19世紀のロシアの作家がコレラなどの感染症をどう描いてきたかがテーマ。日露戦争で反戦を訴えたトルストイのパネルも用意し、「ロシアも含め反戦を唱える人たちと連帯したい」との願いを込めた。
トラブルが起きてしまうのでは。批判を浴びてしまうのでは。そんな「事なかれ」という気持ちが強まるあまり、表現行為が萎縮することがあります。北海道と福井で起きた二つの事例の背景を探りました。
岩本は食い下がった…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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