窯口のふたを開ける。炭焼き職人になって13年。今でも緊張する瞬間だ。
黄金色の炎がチロチロと揺れている。目をこらすと木の幹が白く輝いていた。
「まあまあかな」。中をのぞき込んだ浜田勝正さん(37)は、険しい表情を浮かべた。
窯に原木をくべてから14日間。この日まで中はのぞけない。小さな穴から出る煙の量や色、においで炭の出来具合を想像し、火加減を調整する。
「できていく工程を見られないのが炭作りの難しさ。でも工夫次第で良くも悪くもなるのが面白さ」
そう言って窯に近づき目をこらす。窯の中は1千度を超える。顔の皮膚が熱でひりつく。
町おこしで始めた備長炭作り。全国的に職人の高齢化が進む中、若い世代が集まりました。そしていま、未来に目を向けた取り組みもスタートしています。
「そろそろ出しましょうか」。声をかけられた久松正崇さん(44)が、コザと呼ばれるかき出し棒を手にした。奥行き4メートルの窯に積まれた炭を、窯口近くまで引き寄せる。
折らないようにゆっくりと床…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル