村上潤治
宝飾品や美容用品の卸売業者「APOLLON(アポロン)」(岐阜市)が名古屋国税局の税務調査を受け、ダイヤモンドルース(裸石)の仕入れを架空計上したとして、約12億円の所得隠しを指摘されたことがわかった。
追徴税額は重加算税を含め約4億8千万円。同社は課税を不服とし、名古屋国税不服審判所に審査を申し立てた。
関係者によると、同社は名古屋市内の貴金属輸出入会社(解散)からルースを仕入れ、東京のコンピューター会社に卸していた。2018年に国税局が無予告で税務調査に着手すると、登記上の所在地を愛知県大治町から那覇市、名古屋市、岐阜市へと移したという。
国税局は、同社が17年8~10月、計約12億円分のルースを現金で仕入れたと計上した分について、仕入れは架空で、その分の法人所得を少なく見せかけたと判断。18年5月期に約4億8千万円を追徴課税(更正処分)したという。
同社は国税局に「会社の現金勘定の残高がマイナスだったという理由で、現金取引の実態がないと指摘された。取引の実態はあった」と説明。現在、不服審判所で審査中という。
信用調査会社などによると、同社は1991年創業で、06年に法人化した。美容品や宝飾品の卸販売などを手がけている。
所在地変える調査逃れに対策
税務調査を受けた会社が、意図的に会社の所在地を移転するケースがある。原則として納税地の国税局・税務署の職員だけが質問検査権を使うことができることを悪用した調査逃れで、対策が課題となっていた。
東京・銀座などで飲食店ビルを展開し、「銀座の不動産王」と呼ばれた経営者の脱税事件では、グループ企業が所在地や社名を次々と変更。経営者は「経営戦略」と主張したが、国税関係者は当時「所在地や商号が頻繁に変われば、担当税務署も変わり、資金の流れや帰属がつかみにくくなる」と話していた。
国税通則法の改正で、今年7月からは、会社が移転しても元の所在地を管轄する国税局・税務署の職員が法人税や消費税などの調査ができるようになった。(村上潤治)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル