今村建二、杉浦奈実、長妻昭明、大貫聡子
国と熊本県は、2020年7月の記録的豪雨で氾濫(はんらん)した球磨(くま)川水系の治水対策「河川整備計画」の原案をまとめた。一度中止したダム計画を流水型ダムに衣替えし、遊水地を整備することが柱。ただ、豪雨への不安や行政への不信も重なり、流域で開かれた公聴会では住民の複雑な思いがにじんだ。
公聴会は4月23~27日に各地で行われ、公述人33人が意見を述べた。
相良村での流水型ダムの建設に伴い、村域の一部が水没する五木村。公述人として参加した60代の男性は、「親の代から苦しめられ、引っかき回された我々の苦労はいつまで続くのか」と、ダム計画に振り回されてきた村民の思いを代弁した。
球磨川最大の支流、川辺川への貯留型ダムの整備計画が発表されたのは1966年。以降、村は翻弄(ほんろう)され続けてきた。
住民に不信感、割れる賛否
村民を二分する議論を経て計画を受け入れ、水没予定地の住民の多くが代替地や村外へ引っ越した。
ところが、ダム計画は2008年に蒲島郁夫知事の「白紙撤回」で中止に。しかし、20年7月の豪雨が球磨川流域を直撃すると、再びダム計画が浮上した。
行政と災害に振り回されてきた男性は「仮に流水型ダムをつくって何かあっても、また誰も責任を取らないのではないか」と、国や県への不信をぶつけた。
20年豪雨で20人が犠牲となった中流域の人吉市では、賛否が分かれた。
100世帯以上が床上浸水し…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル