野球の“素人”を自称しつつ、プロ野球の第一線で活躍する選手にもアドバイスする謎の野球アナリスト「お股ニキ」。昨年3月の「セイバーメトリクスの落とし穴」(光文社)に続き、第2弾となる「なぜ日本人メジャーリーガーにはパ出身者が多いのか」(宝島社新書、935円)も話題となっている。抽象論ではなく、統計データなどを基に、誰にでも分かりやすいと評判の分析は、新しい野球の見方を示してくれる。(久保 阿礼)
【写真】ダルビッシュが認めたツイッター発、正体不明の“素人”野球評論家・お股ニキって何者!?
お股ニキ氏の本業は作家ではない。ツイッターで、「好き勝手に」野球の見方や考察を述べてきた“野球の素人”を自称する。
本業の仕事をしながら、初めて筆を執った「セイバーメトリクスの落とし穴」は、データにとらわれがちな野球界の風潮に風穴を開け、ベストセラーに。ダルビッシュ有(カブス)、千賀滉大(ソフトバンク)といった一流投手からの支持も得た。
第2弾となる今回の著書は約1か月で仕上げた。「編集者から昨年8月中旬ぐらいに、『セ・パの格差などについて論じてほしい』と依頼され、最初はコラムかなと思ったのですが、蓋を開けたら書籍でした…」。編集スタッフがいないため、ツイッターを通じて、親交のある「経済学系大学院生」らにデータ分析などの支援を依頼。ネットの集合知をフル活用した。
メジャー選手は、確かにパ・リーグ出身の選手が多かった。体格的にもメジャー選手以上というダルビッシュ、大谷翔平(エンゼルス)を始め、主力として活躍する田中将大(ヤンキース)らはいずれもパ出身だ。昔から「人気のセ、実力のパ」と言われてきたが、オールスター、交流戦の通算戦績でも全て「パ」が圧倒。昨年の日本シリーズでもソフトバンクが巨人を4タテした。ここ10年では「パ」が7年連続9回目の日本一となった。
セ・パ別に投手、野手の身長、体重の分布図を作ると一つの答えが見えてきた。パの100キロ超の打者は、中田翔(日本ハム)、井上晴哉(ロッテ)、山川穂高、中村剛也(ともに西武)らがいるが、セの主力にはいない。また、パでは小柄でも強く振り抜くことができる選手を獲得できていた。パのチームを中心に、スカウトの目利きと育成システムを組み合わせ、DH制による運用を効率的に行い、素材型の選手が才能を開花させている。
「少々、粗削りな選手でも科学的に裏付けのあるトレーニングで鍛えて、試合をこなしていく。球団にその環境があるかどうかも差別化につながります。育成は経営的に言えば、ローリスク、ハイリターン。育成選手にとっては3年以内に支配下に入れるかの争いで非常に過酷です。高いレベルでもまれ、大化けの可能性もあります」
ここ10年はソフトバンクの強さが際立っている。
「2010年代はめちゃくちゃ強かった。根本陸夫さん、王貞治さんの思想が源流にあって、そこに先端技術を組み合わせたから。育成から千賀、牧原(大成)、甲斐(拓也)、大竹(耕太郎)、モイネロ、周東(佑京)が出てきた。接戦にも強くて、打ち勝つイメージです。まだまだ勝ち続けそうですね」
五輪イヤーとなる2020年。「セ・パ格差」は縮まるのだろうか。
「残念ながら、ドラフト、外国人選手の獲得やトレードなどの補強を見ていると、今後もパ・リーグとの差は開いていくとみていいでしょう。セでは巨人、DeNA、広島は戦略がはっきりしています。でも、ほかの球団がどうかな、と。ただ、セとパ、どっちが上とか下とか言うつもりはなく、浮き沈みもあります。もしセ・リーグが交流戦で勝ち越したり、日本一になれば、また違う流れが来るでしょうから」
◆お股ニキ 野球経験は、中学の部活動レベル。どちらかといえば、変化球には自信アリ? フォロワー約2万9000人がいるツイッターではプロ野球や大リーグのプレーを解説する。サッカー、スペインのRマドリードなども詳しい。ダルビッシュ以外に、プロ野球選手ともひそかにやり取りする。最近はアンチもいる謎のアナリスト。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース