森林総合研究所と東京農工大学、東京農業大学などの共同研究チームは、ツキノワグマの食性を調べ、5歳以上の成熟した雄は一定量の鹿肉など高栄養の物を食べていることが分かった。食べ物を求めて人里へ出没する個体の原因や特性を検証する手掛かりとなるため、研究チームはツキノワグマの科学的な保護管理が期待できるとみる。 日本では毎年数千頭以上の熊が人里に出没するなどして捕殺されている。人里への出没の原因は、山のドングリの不作や人里で放棄された果樹への誘引など、食べ物が関係することが知られている。捕殺する個体の性別や年齢には偏りが見られ、成熟した雄の割合が高かった。 研究では2003~13の11年間、栃木、群馬の両県にまたがる足尾・日光山地で学術捕獲した延べ148頭のツキノワグマを調査した。体毛を根元から5ミリずつ切り分け、炭素と窒素を測定し、各個体の夏(6、7月)と秋(9、10月)に食物の種類を推定した。 研究の結果、同じ地域に生息する熊であっても、個体の性別と年齢、ドングリの豊凶によって、異なる食生活を送っていることが明らかになった。 一般的に熊は、夏には野生の桜やキイチゴの果実、アリ、秋は冬眠中に必要な脂肪を蓄えるためドングリを食べるとされる。 しかし研究では、5歳以上の個体が夏にニホンジカを多く食べ、特に雄はその傾向が強かった。 秋はどの年齢の熊もドングリを中心に食べるが、ドングリが不作の年は5歳未満の雄や雌は昆虫を食べていた。5歳以上の雄との争いを避けるためと見られる。5歳以上の雄はドングリが豊作の年でも一定量の昆虫や鹿を食べていた。 鹿肉と同様に栄養価の高い生ごみや、放棄された果樹が人里の中に放置されることが、高栄養な食物を欲する雄の熊を人里へ引き寄せている可能性が高いと考察。人里に熊を誘引する食べ物の撤去や管理を徹底することで、熊の科学的な保護管理が期待できるとした。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
Leave a Comment