遺伝子を編集されて生まれる赤ちゃんはフィクションの世界で、「デザイナーベビー」としてたびたび描かれてきました。近年、ゲノム編集技術が進歩し、現実味を帯びつつあります。身体能力や知能の強化だけでなく、遺伝病を防げるかもしれません。とはいえ、問題点も多く、できたとしても許容されるものなのでしょうか。
少し唐突感があるかもしれません。ただ、こうしたことが昨年、厚生労働省の専門委員会で議論されてきました。
きっかけは2018年秋、香港であった国際会議です。出席した中国人の研究者が、ゲノム編集した受精卵から双子が生まれた、と発表しました。世界初とされるデザイナーベビーの試みに懸念や批判が相次ぎました。中国の裁判所は昨年末、この研究者に懲役3年の実刑と罰金を言い渡しました。
ゲノムとは細胞の中にある遺伝情報のことです。「生きものの設計図」とも言われ、ゲノムのわずかな違いが体つきの違いにあらわれることもあります。
2012年、狙った部分の遺伝子をピンポイントで書き換えられる「CRISPR(クリスパー)/Cas(キャス)9」というゲノム編集技術が登場しました。パソコンで文章を修正するとき、直したい場所にカーソルを動かして言葉を消したり、新しい文字を挿入したりしますが、それが細胞の中で行われるイメージです。使い勝手のよさから一気に広まり、農水産物の品種改良や病気の治療法開発に使われています。
この技術を人間の受精卵に使ったのが中国の事例でした。体外受精した受精卵をゲノム編集し、HIV(エイズウイルス)にかかりにくくした、というものです。
■身体能力や知能…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル