今年度から全国の小中学校で普及促進事業が始まった学習者用「デジタル教科書」。デジタルならではの拡大・縮小機能や、動画などデジタル教材との連係で、学び方を広げようという狙いがあるが、発行会社による質の差も大きい。一般社団法人教科書協会のデジタル教科書政策特別委員会で座長を務める黒川弘一氏に、課題を聞いた。
最低限の機能・価格の基準を
――普及促進事業が始まった。文部科学省の有識者会議の第1次報告も6月に出て、同会議のもとに設けられた技術面の課題に関する作業部会の議論も今月スタートしたが。
本格的な普及に向けて、第一歩を踏み出した意義は大きい。しかし、教科書会社の立場で言えば、検討すべきことが山積している。まず、現状では、デジタル教科書は特別な教材の位置づけで、教科書会社に発行義務はなく、各社の工夫と努力次第になっている。大まかな方向性は一致しているものの、導入の方法や、拡大・縮小などの操作方法、機能、価格もそれぞれ違う。全国で活用することが求められるとすれば、標準化に向けた開発や調整が必要だ。
今後、国が無償給与している紙の教科書に対して、どういう位置づけで予算化し、導入するのか。2024年度の小学校の教科書改訂に向けて、国がロードマップを決め、最低限の機能や価格の基準を示してもらわないと、より良い教科書を持続的に提供していく見通しが立たない。
■規格の統一めざす…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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