増山祐史 遠藤美波
性犯罪の被害を裏付けるため、尿に含まれる睡眠薬などの薬物成分について数分で検査できるキットを警視庁が全国で初めて開発した。これまでは1カ月かかることもある本鑑定でしか成分の有無が分からず、その間に被害者が事件化に後ろ向きになることがあった。同庁はこのキットで被害者の協力を得やすくなるとともに、早期に捜査を始められると期待している。
捜査1課によると、こうした薬物は「デートレイプドラッグ」と呼ばれ、容疑者が食事相手の飲み物に入れて意識をもうろうとさせた上でわいせつな行為をする際に用いることがある。被害は東京都内で年間約20件確認されているという。
これまで同課は、薬物が使われたかどうかを調べるのに相談に来た被害者から採取した尿を、長いと1カ月ほどかけて鑑定していた。しかしこの間、被害者は「意識がなかったのは飲酒が原因」と自責の念を強め、被害に遭ったかどうかの自信もなくし届けを取り下げることなどがあった。
同課が民間企業と協力して開発したキットは、精度は本鑑定より落ちるものの数分でデートレイプドラッグが使われた疑いの有無を調べることができる。陽性反応が出れば事件の疑いが濃厚になるため、現場周辺の防犯カメラの回収といった初動捜査に着手でき、被害者に対しても薬物による被害を受けた可能性があるとして協力を求めやすくなる。
キットは、「デートレイプ」の「D」と「ドラッグ」の「D」の間に、捜査1課が断ち切るという意味で「1」をはさみ、「D1D」と名付けられた。26日から本格導入され、島嶼(とうしょ)部を除く都内の全警察署に配られる予定だ。(増山祐史、遠藤美波)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル