トランスジェンダーが戸籍上の性別を変えるのに、生殖能力を失わせる手術などを必要とする「性同一性障害特例法」の要件は、憲法に違反するか――。最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は25日に判断を示す。最高裁は2019年、別の事案を4人の裁判官で審理した第二小法廷が要件を「合憲」と判断しているが、今回は裁判官15人全員で審理する大法廷に回付された。4年間の社会の変化を踏まえ、最高裁の判断は変わるのかが注目される。
大法廷が審理しているのは、出生時の性別は男性で、女性として社会生活を送るトランス女性が、手術なしでの性別変更を求めた家事審判だ。
4年前は合憲
特例法は性別変更に五つの要件を定めており、そのうち「生殖腺がないか、その機能を永続的に欠く」(生殖不能要件)と「変更する性別の性器に似た外観を備えている」(外観要件)を満たすには、精巣・卵巣の摘出や陰茎切除などの手術が原則必要とされる。
申立人は手術を受けていないが、長年のホルモン投与で生殖能力が減退するなどし、要件を満たすと主張。手術の強制は幸福追求権を定めた憲法13条などに違反すると訴えている。家裁、高裁は認めなかったため、最高裁に特別抗告した。
最高裁は審理を大法廷に回付した上で、9月、公開の法廷で弁論を開いて代理人の主張を聞いた。また、プライバシーに配慮した状態で申立人本人の意見を聞くため、非公開の「審問」を別に開く異例の措置をとった。
生殖不能要件をめぐっては、最高裁の判断を前に、別の事案で「違憲」とする初めてとみられる司法判断が出た。静岡家裁浜松支部が今月11日、生殖不能要件は「違憲で無効」と判断。手術を受けていない申立人の、女性から男性への性別変更を認めている。
浜松支部の判断は他の裁判所の判断を拘束する効力はないが、最高裁が規定を違憲と判断すれば、全国の裁判所に与える影響は極めて大きい。当事者にとっては、手術なしの性別変更に大きく道が開かれることになる。(遠藤隆史)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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