トレラン大会草分け「ハセツネ」岐路 自然環境配慮、開催方法変更へ

 山や丘陵など自然の中を走るトレイルランニング。そのレースの先駆け的存在で、東京・奥多摩の山々を舞台に1993年から続く「日本山岳耐久レース~長谷川恒男Cup~」が9日、始まった。自然環境への配慮から今後、開催方法の見直しを検討すると発表された。

 「久しぶり」「懐かしいね」。9日午前。東京都あきる野市五日市の受付会場では、そんな会話があちこちで交わされた。台風被害やコロナ禍の影響で中止が続き、開催は4年ぶり。レースは、三頭山(みとうさん)(標高1531メートル)、御前山(同1405メートル)など奥多摩の主峰が連なる山岳地の計71・5キロを24時間以内で走り、タイムを競うもの。第30回記念大会となる今回はコースを2周する「ダブル」の部も設けられ、多くの選手は夜通し走って10日昼までのゴールを目指す。

 3年前にトレランを始めたという市内の看護師、剱持(けんもつ)雄二さん(45)は「これまでエントリーした5大会はすべて中止。初めてのスタートラインにやっと立てる。雨が降ってきそうで不安もありますが、ワクワクします」。川崎市の病院事務員、笛田牧子さん(57)は「大人の大運動会。どこよりも厳しい大会ですが、それだけゴール後のうれしさは大きい。出場9回目ですが、久々なのでドキドキです」と話した。

 午後0時45分、スタート地点の市立五日市中学校から、上位を目指す「エリートの部」の選手が出発し、午後1時にその他の選手たちが走り出すと、応援に駆けつけた家族や仲間らは拍手で送り出した。

大会の由来は「天才クライマー」

 大会は、天才クライマーと呼ばれ、31年前にパキスタンの未踏峰で雪崩にあい亡くなった長谷川恒男(1947~91)をしのび、東京都山岳連盟が93年に創設した。「ハセツネカップ」や「ハセツネ」の通称で呼ばれる。参加者は初回の約500人から年々増え、2000年代、全国の2千人以上が挑む国内最大規模の大会に成長した。優勝タイムは、男子は当初の9時間台から7時間台へ、女子は12時間台から9時間台へとレベルも上がっている。

 一方で強まったのが自然への影響を心配する声だ。「ハセツネ」のコースは大半が「秩父多摩甲斐国立公園」内。中でも三頭山山頂付近は00年、最も厳正な自然保護を行う「特別保護地区」となった。

 同じころ、ハセツネなど主要大会の人気の高まりを受けて各地で大会が創設され、愛好者も年々増えた。環境省は15年、国立公園内でのトレラン大会開催の指針を発表。指針では、特別保護地区について「木竹や植物の破損など、規制されている行為の発生が懸念される場合にはコースに含まないこと」とし、同地区に準じる「第1種特別地域」も同様に扱うと定めた。

 以降、同地区・地域をコースから外したり、歩行区間と定めて走るのを禁じたりする大会が相次いだ。同地区・地域内を走る大会の新設は原則認めていない。「認められない大会もあるのに、ハセツネはなぜ走れるのか」。現地を管轄する環境省奥多摩自然保護官事務所には、そんな声が届くようになったという。

伝統の大会。来年以降はどんな開催の仕方が検討されているのでしょうか。その背景は――。

■ルールやコース「変えづらい…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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