お正月の箱根駅伝で往路優勝校に贈られるトロフィーとメダルは長年、ひとりの寄木(よせぎ)細工職人の手で生み出されてきた。
新春、第100回記念大会を待ち望みながら亡くなった職人の遺作が、箱根の山を上った先で勝負を見届ける。
昨年7月、82歳で亡くなった金指勝悦(かなざしかつひろ)さん。江戸時代後期から「寄木細工の里」として知られる神奈川県箱根町畑宿(はたじゅく)に生まれた。
職人の道に進むと、年中休みなしで制作に没頭。午前7時に起きて工房に行き、午後9時に帰るような生活だった。妻のナナさん(65)は「寄木と結婚したんじゃないかというくらい」と苦笑いする。
勝悦さんは「無垢(むく)作り」という技法で知られた。異なる色合いの木を接着して断面に模様を作り出した木の塊から、ろくろで立体作品を削り出す。
その腕を買われ、第73回大会(1997年)から往路優勝校に贈られるトロフィーの制作を任されてきた。
こだわりは世相を反映することだ。
藤井八冠や鬼滅をヒントに
明るいニュースが飛び込んでくるとテーマを変えて作り直すこともあった。「いろんな大学に自分の作品を置いてもらえたらうれしい」と、学生たちがしのぎを削る箱根駅伝を毎年とても楽しみにしていたという。
つなぐ、つむぐ 箱根駅伝100回
2024年1月2日、箱根駅伝は100回大会を迎えます。残り500㍍での棄権、異例の1年生主将、繰り上げを避けた7秒の戦い……。伝統のトロフィーを作った職人秘話も。様々な「箱根」を取材しました。
第94回大会(2018年)は、将棋で29連勝した藤井聡太さん(現・八冠)や、永世七冠の羽生善治さんの活躍から着想を得た。第97回大会(21年)はアニメ「鬼滅の刃」をヒントに、人を食らう鬼と戦う登場人物と新型コロナウイルスと戦う人類を重ねた。
トロフィー制作を始めた当初…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment