時速500km 東京~名古屋が40分で移動可能に
日本を、もっと強くする。
東海道新幹線開業から50年余り。
JR東海が社運をかけて取り組んでいるのが「リニア中央新幹線」だ。
新幹線のおよそ2倍の速度である時速500kmで東京、名古屋、大阪を結ぶ。
2027年には東京~名古屋が40分で、2037年には東京~大阪が67分で移動できるよう開業を目指している。
総工費は9兆円超。
従来の鉄道は車輪とレールの摩擦により走行するが、高速だと車輪が空転して、安定した走行には限界があると指摘されていた。
リニアでは「超電導磁石」を利用することで、車体をおよそ10cm浮上させ、この問題点を克服。
「時速500kmの浮上走行」が実現可能になった。
車体や仕組みの実験は山梨県にある実験線で1997年4月から開始。
有人走行で既に時速603kmを記録している。
国交省実用技術評価委員会が営業線に必要な技術開発の完了を確認していて、技術面では順調に進んでいる「リニア中央新幹線」。
しかし、あるトンネル工事を巡って、静岡県とJR東海の激しい対立が続き、2027年開業に向けて暗雲が立ちこめ始めている。
難工事「南アルプストンネル」 激しい対立で静岡工区だけ着工できず
JR東海は、まず“難工事”とされる箇所から工事に着手している。
都市部の地下に建設中の品川、名古屋駅。
そして、山梨、静岡、長野にまたがる南アルプスを貫く「南アルプストンネル」だ。
現地を視察したことのある国土交通省の幹部は「天に挑むような工事だ。本当に実現できるのか」との印象を漏らしていた。
このうち、長野工区、山梨工区は着工しているものの、静岡工区は未着工だ。
その原因は静岡県とJR東海の対立にある。
静岡県の川勝知事は、静岡県を流れる大井川について、工事で地下水など、トンネル内に湧き出る水が県外に流出することで、大井川水系の流量が減ると懸念している。
一方、JR東海と静岡の間の経緯は以下の通り。
2017年10月 工事 着手に向けて利水者との基本協定について大筋で合意
2017年10月 静岡・川勝知事が協定締結に反対
2018年 8月 大井川利水関係協議会(利水者・8市2町・県で構成)を設立
2018年10月 JR東海 トンネルの湧水を全量戻すことを表明
そもそも、静岡県としては、2017年の協定について「大筋で合意」との認識は持っていないという。
関係者によると、川勝知事が「トンネル湧水を全量戻すこと」を約束事として協定に入れるよう求めたところ、JR東海が応じず、知事のJRに対する不信感が募り、突然の反対表明に至ったとのこと。
その後、様々な質問、やり取りが繰り返される中、静岡県は、トンネル湧水の戻し方や、周辺の井戸が枯れた場合の補償内容など、地元住民や利水者が、「安心感を感じられる答え」を求めているが、JR東海の回答について静岡県の幹部は「答えのレベルになっていない」と怒りを隠さない。
業を煮やした、国土交通省は事務次官や鉄道局長が静岡県に出向き川勝知事と会談。
国交省、JR東海、静岡県の3者による協議会を作り、仲裁しようと試みたが、川勝知事から環境省や農水省も協議に入れるべきだなどの意見が出され、年末になっても協議会の開催は決まっていない。
静岡工区を早期に着工できないと、2027年に開業できない事態が現実味を帯びてくる。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース