宮崎駿監督の最高傑作(記者の私見)にして最大の問題作でもある漫画『風の谷のナウシカ』を、コロナ下の今こそ徹底的に読み解きたい――。そう考え、「動的平衡」の生命論で知られる生物学者・福岡伸一さんに話をうかがいました。長年『ナウシカ』を読み込んできた福岡さんは、「ナウシカが最終的にたどり着いた生命観・人間観は、『鬼滅の刃』の煉獄(れんごく)杏寿郎(きょうじゅろう)の言葉とも重なる」と指摘します。「動的平衡」、「ナウシカ」、そして「鬼滅」――。これらはどう結びつくのでしょうか。
- 【連載】コロナ下で読み解く 風の谷のナウシカ(全8回)
- 宮崎駿監督の傑作漫画「風の谷のナウシカ」は、マスクをしないと生きられない世界が舞台です。コロナ禍のいま、ナウシカから生きる知恵を引き出せないかと、6人の論者にインタビューしました。スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー、民俗学者の赤坂憲雄さん、生物学者の福岡伸一さん、社会学者の大澤真幸さん、映像研究家の叶精二さん、漫画家の竹宮惠子さんの6人が、それぞれの「ナウシカ論」を語り尽くします。
(この記事は漫画『風の谷のナウシカ』の内容に触れています)
ナウシカの叫び、鬼滅・煉獄杏寿郎の言葉にも
――漫画と映画、二つの『ナウシカ』の違いをどう考えますか。
「映画では、有毒な『瘴気(しょうき)』を発する『腐海(ふかい)』が、実は文明で汚染された環境を浄化していたことにナウシカは気づきます。『環境全体のバランスを考え、人間に害を及ぼしかねない存在とも共存していく』というのは大事な視点ですが、人間と環境の関係を考える上で、それだけでは十分とは言えません」
――なぜでしょう?
「人間は地球環境にとって『最後にやってきた、究極の外来種』です。他の生物はさまざまな形で環境を再生・維持する役割を果たしているが、人間は環境から収奪するばかりで、地球や他の生物種に迷惑しか、かけていない。人間がいない方が地球は健全にやっていけますが、人間にとって地球環境はなくてはならないものです」
「破壊的な存在である人間が、この星の中で、環境・自然の循環の輪の中に受け入れてもらうことができるのか。漫画版『ナウシカ』は、そういう切実で大きな問題を追究しています」
――漫画版では、ナウシカが人類のことを「大地を傷つけ 奪いとり 汚し 焼き尽くすだけの もっとも醜いいきもの」としています。ナウシカと敵対する土鬼(ドルク)の皇帝も「とうの昔から俺達(たち)はこの星ではいらなくなった生物なのさ」と自嘲する。現代に生きる私たち人間も「地球環境にとっては不要な生物」ということですか。
「そうだと思います。少なくとも現時点では、人間は地球にとっての『がん細胞』と言っても過言ではない」
「なぜ、人間がそのような生き…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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