現役の人気AV女優が書いた純文学小説が話題になっている。紗倉まなさん(27)の「春、死なん」(講談社)。有名書店の売り上げベスト10にも入り、質の高い文学作品として評価されている。紗倉さんの多彩な実像に迫った。(編集委員・市田隆)
幼い頃は作文が苦手だった
表題作は、妻に先立たれた後、目の不調、尽きせぬ性欲を抱えながら、二世帯住宅の息子家族との関係もうまくいかない70歳の男性が主人公。鬱屈(うっくつ)した日々から再生のきっかけをつかむまでの物語だ。
私は、講談社の老舗文芸誌「群像」(2018年10月号)に掲載された作品を読んだ際、人間心理のあやを切り取る描写力に感嘆した。近い時期に文芸誌で発表された、ある芥川賞候補作品より上質と感じた。読書面で書評委員を務めた経験や、長年の趣味の文芸誌購読で多くの若手作家の作品に接してきた中でも鮮烈な印象だった。
AV女優をしながら「なぜこの純文学作品を生み出せたのか」。その人となりに触れてみたいと思い、2回計約2時間、紗倉さんに話を聞いた。
「本は好きだったんですか」。こう尋ねると、幼い頃から小説に親しんだ文学少女ではなかったと言う。小学生のころから作文が苦手で、本を読みたいとも思わなかった。
「小学校で読書感想文を書くと先生から酷評されてばかり。正当に読めてない、感想に適していないとか。書いたり、読んだりはコンプレックスでした」
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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