新型コロナウイルス対応について安倍晋三首相に直接聞こうと企画された6日夜のインターネット番組で、首相がノーベル医学生理学賞受賞者で京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授から諭されたり、突っ込まれたりする場面があった。
番組は、動画サイト「ニコニコ生放送」を運営するドワンゴとヤフーが企画。安倍首相は官邸から、山中氏は京都から参加した。新型コロナをめぐり、東京五輪・パラリンピックの延期問題や感染拡大に伴う学生支援策などについて議論が交わされた。
今年夏に開催される予定だった東京五輪は、新型コロナの影響で来年7月に延期された。首相は番組で、五輪を成功させるために「治療薬、ワクチンの開発を日本が中心になって進める」と意気込んだ。
ところが、山中氏は五輪には世界中から選手や観客が集まり、人の大移動が起きると指摘。「(感染拡大を生まずに)これを可能にするだけのワクチン量をあと1年で準備できるかどうかというと、かなり幸運が重ならない限り、ワクチンだけでは難しい」と自らの考えを披露した。そのうえで、「アビガン」を含め日本で開発され、別の病気で承認されている薬が新型コロナに効くか調べ、首相がリーダーシップを発揮して特例的に承認していくよう求めた。
番組では、大学生など学生への支援策についても話題になった。首相は4月から始まった給付型の奨学金制度などを説明しつつ、「さらなる支援を早急に検討し、速やかに追加的な対策を講じていきたい」と述べ、与党と協議して今月中にもまとめる考えを示した。だが、山中氏は大学院生も苦境にあるとして「大学院生の存在も頭に入れていただけたら」と指摘。司会者が大学院生が給付型の奨学金を活用できるか尋ねると、首相は「将来の課題として考えていかなければいけない」と述べるにとどめた。
一方、政府が全世帯に配布する布マスクについても番組で質問があり、野党などが疑問視する納品業者の選定について首相は「疑惑というのは全くそんなものありません」と反論。配布開始によって、流通するマスクの「価格が下がったという成果もある」と胸を張った。(菅原普、楢崎貴司)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル