お盆が近づくこの時期、夏休みで海外に出かける人も多いのではないでしょうか。旅には困りごとも付きもの。スリやぼったくり、慣れない外国のマナーなど、どう対応したらよいのか。外国で暮らし、出張も多い本紙の特派員たちに体験談を聞いてみました。
ぼったくりにニセ札
効率よく観光地を回るために重宝するタクシーも、国によってはトラブルの発生源となる。
タイを拠点とする染田屋竜太記者は、メーターを使わない運転手にぼったくられる被害にたびたび遭ってきた。メーターでの料金相場と比べて、2倍以上の金額を請求されたことも。「物価が上がっているのに、タクシー料金は安く据え置かれている」ことが背景にあるという。最近は配車アプリを活用。迎えに来てくれて、料金も行き先に応じてあらかじめ知らせてくれる明朗会計が人気で、東南アジア各地でも導入されているという。
モスクワ支局の石橋亮介記者によると、代金をめぐるトラブルが少ないロシアで「100%ぼったくりに出会える」のが、空港のタクシー。ロシアでもやはり、配車アプリをスマートフォンに入れておくことがおすすめだという。
中国のタクシーはニセ札が要注意だ。北京駐在の延与光貞記者は、飲み会後に使ったタクシーで被害にあった。「家に到着して100元札(約1600円)で支払うと、『これはニセ札だ』と運転手に突き返されました。ところが、突き返すように見せて(運転手が持っていた)ニセ札にすり替えていたんです」。お釣りにニセ札が混ざるケースも多いという。
「中国の人はお札を受け取る時、ニセ札でないかを本当によく確認しています」。見分けられるまでには何日もかかるかもしれないが、ニセ札は手触りがツルツルしていることがあるそうだ。
チップはどうする?
米国などに根付いているチップの慣習も、多くの日本人にとっては悩みのタネだ。
「飲食店のチップは15~20%が相場。レシートに15%=●ドル、18%=●ドルと書かれていることが多い」。そう話すのは、ニューヨーク支局の藤原学思記者。これを参考にして、クレジットカードで支払うので、細かい現金を用意する必要もないという。
ワシントン駐在の香取啓介記者は、金額をめぐって店側に問い詰められたことがある。「切りのいい金額を支払ったらチップが12%くらいに。支払い後に『何が不満なんだ』と追いかけられました。別の店では『最低でも15%だ』と言われました。本来は善意なので、いくらでもいいはずですが……」
金額はともかく、スマートに渡してみたい。工夫できることはあるのか。
米国への出張経験が多いロンドン駐在の遠田寛生記者のおすすめは、1ドル札の三つ折りだ。「『複数枚の紙幣は多いかな』という時に役立つ。厚みのためか、相手にも納得感がある」。逆に、禁物なのは財布を開けながら渡すこと。「防犯上の理由です。特に、連泊するホテルではあまり現金を見せない方がいい」と助言する。(神田大介、伊藤喜之)
スリ、目にもとまらぬ早業で
イタリアの首都ローマの地下鉄では最近、若い女性2人組によるスリが多発しているという。ぐいぐいと体を押しつけ、そのすきにズボンやカバンから物を盗んでいくとか。ローマ支局長の河原田慎一記者は「目にもとまらぬ早業。私もこの1年半で3回カバンを開けられました」。
中心駅のテルミニとレプッブリカ、バルベリーニ、スパーニャというA線の4駅の間が特に危険だ。国立劇場やトレビの泉、有名ブランド店などが集まり、観光で使う機会が多い。
中南米をカバーする岡田玄記者がアルゼンチンの首都、ブエノスアイレスの地下鉄で遭遇したのは、とんでもないスリ集団。
夏のある日、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に乗ってきた男が突然、嘔吐(おうと)を始めた。スポーツ飲料を飲むのだが、数十秒するとまた嘔吐するという具合。しかも、乗客がいる方によろけながら吐く。乗客が気を取られているうちに、別の何者かがカバンから物を盗むという手口だった。
「これは特殊なケースですが、1人が気をそらし、もう1人が盗む手口は他にもあります。たとえば広場などで旅行者にケチャップや絵の具をかけ、別の人が親切を装ってふいてあげる間に、仲間がスリやひったくりをする『ケチャップ強盗』です。今もよく現れると聞きます」
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル