新屋絵理
「言葉の刃で、傷つけられた。同じ苦しみを他の人に味わってほしくない」。2019年に行方不明になった小倉美咲さん(8)の母親・とも子さん(38)が20日、会見を開き、ネット中傷した投稿者の責任を追及するための訴えを起こしたと明かした。
小学1年で7歳だった美咲さんは19年9月、山梨県道志(どうし)村のキャンプ場に家族や友人と訪れ、テントから離れて遊んでいた友達を追いかけたまま行方がわからなくなった。SNSで情報を求めると、励ましのメッセージとともに、「殺したのは母」「(美咲さんは)もう生きていない」などの言葉も相次いだ。
娘が見たら、どれだけ傷つくか
とも子さんは会見で、「書き込みを美咲が見たらどれだけ傷つくか。美咲の帰りを待つ長女も悲しむと思い、子どもを守るために訴訟することにした」と、言葉を詰まらせながら語った。
身の危険を感じたこともあったという。投稿者が自宅近くを訪れ長女に話しかけ、その様子をネットに書き込んだ。自宅に行くなど予告めいた投稿もあった。恐怖のなかで生活してきたと振り返り、「書き込む側は傷つけるつもりがなくても、受け取る側は何十倍も苦しみ、ずっと記憶に残るんです。みなさん一人ひとりに考えてほしい」とした。
訴訟では、ツイッターへの投稿やブログへの書き込みなどをめぐり、ツイッター社などに対し投稿者の情報開示を求めた。特定できれば損害賠償請求や刑事告訴を検討する。これまでに、「殺すぞ」などメッセージを送った男が脅迫罪で有罪になり、別の男は名誉毀損(きそん)罪で公判が続く。
コロナ禍のためビラを街で配るのが難しい今、美咲さんを捜す方法は、ネットが頼りだ。「私たち家族は、美咲が無事に戻ってくると信じている。戻ってくるまで、怖がることなく、ネットで美咲のことを伝え続けます」(新屋絵理)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル