「現在と将来の世代が、ここで起きた出来事を忘れるようなことがあってはなりません」。二つの被爆地を相次いで訪れたフランシスコ教皇。雨の長崎で、夕闇の広島で、被爆者の痛みを記憶に刻み、平和に向けて連帯して行動するよう世界に訴えた。
「この町は、核兵器が悲劇的な結末をもたらすことの証人です」。降りしきる雨の中、教皇は長崎市の爆心地公園で訴えた。
教皇はこの日、めまぐるしく二つの町を巡った。
早朝に特別機で東京を出発して長崎へ。爆心地公園でのスピーチの後は、16世紀の弾圧で殉教した「日本二十六聖人」の記念碑がある西坂公園で、信仰のために殉教した人々を悼んだ。
午後には、長崎県営野球場でミサを開いた。雨がやんで晴れ空の下、教皇はオープンカーで手を振りながら笑顔で入場した。抱え上げられた赤ちゃんの額にキスする場面もあった。
その後は広島へ移動。広島平和記念公園での「平和のための集い」で被爆者の訴えに耳を傾けた。
「平和の巡礼者として、あの悲惨な日に、傷と死を被ったすべての人との連帯をもって悼むために参りました」と記帳。スピーチでは「すべての犠牲者を記憶にとどめる」と述べ、戦禍の悲劇について「ヌンカ・マス」と4度繰り返した。スペイン語で「二度と繰り返さない」という意味だ。広島の人々が訴えてきた「ノーモア」の思いと重なる言葉だった。
教皇に向けて被爆体験を証言
フランシスコ教皇は午後6時40分過ぎ、広島平和記念公園に到着。暗闇のなか、約2千人が拍手と歓声で迎えた。原爆死没者慰霊碑の近くで被爆者らと握手をし、言葉に耳を傾けた。
広島で被爆した梶本淑子さん(88)=広島市西区=はマイクの前に立ち、教皇に向けて被爆体験を証言した。「平和を願う多くの人の力と亡くなった人の魂によって、核は必ず廃絶されることと確信しております」。その言葉を、フランシスコ教皇はじっと聞いていた。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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