東京・神田でバーを経営する藤井達郎さん(40)が、リンゴを原料にした発泡酒シードルの醸造会社を故郷の群馬県沼田市利根町平川で昨年6月に設立し、醸造所を建てた。藤井さんが代表を務め、7日、地元の幼なじみやバーの常連客と「初仕込み」をした。
藤井さんは元プロボクサー。バーテンダー修業を経て独立し、2015年にバーを開業した。その頃から「地元沼田のリンゴを使い、自分でシードルをつくりたい」と思うようになった。神田のバーは世界中から仕入れたシードルを看板メニューにしている。
「凝り性」だという藤井さんは、コロナ禍以前は毎年のようにスペインやフランスの醸造所や農家を訪ねた。産地を実際に見て、作り手と交流するのが目的だという。2年前からシードルづくりの準備を始め、今年2月に果実酒の製造免許を取得した。
ドイツのワイン研究施設勤務を経て日本で醸造所開設にも携わった経験のある醸造家の男性を招き、二人三脚でシードルづくりに励む。リンゴを機械ですりつぶし、プレス機で搾った果汁を発酵させる。今月仕込んだ初回の約1600リットルは6月上旬に沼田市の飲食店や酒店、神田の自身のバーなどに並ぶ予定だ。新年度は6千リットルを生産する。
原料のリンゴは、群馬生まれの品種「ぐんま名月」や、主力の「ふじ」など。ぐんま名月は蜜が多い人気の品種だが、ふじに比べて保存期間が短く生産量が少ない。産地以外にはほとんど出回っていない希少さに目を付け、ぐんま名月のシードルを看板にし、他の品種をブレンドしたものなどを商品化していく。「まずは香りや甘みなど沼田のリンゴの良さを感じてもらえるシードルを作っていきたい」と藤井さんは言う。
一方で、複雑な味わいの海外産に近いシードルづくりにも挑戦する。渋みや酸味のある欧州原産のシードル用のリンゴ栽培も沼田市内で始めている。
「ウイスキーやワインのように、シードルが当たり前に店や家庭で飲まれるようにしたい」(遠藤雄二)
スコットランドの蒸留所をめぐり、出会った
藤井さんがプロボクサーを引退…
2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル