世界的なアウトドア用品メーカー「パタゴニア」(米国)の日本支社が、支社の労働組合代表を務めるパート従業員の女性に対し、年内での雇い止めを通告したことがわかった。労組はパートの雇用期間を「最大5年未満」に制限する会社側への抗議を目的に、代表の女性が中心となって結成された。労組は「不当な雇い止めだ」として、団体交渉などを通じて撤回を求めていく方針だ。
雇い止めの通告を受けたのは、札幌市の店舗に勤めるパタゴニアユニオン代表、藤川瑞穂さん(51)。2019年4月にパートとして入社し、来春に5年を迎える予定だった。
労組によると、今年4月下旬、藤川さんは勤務先の店長と面談した際、「人事評価制度に基づくパフォーマンスが基準に満たない」として、半年ごとの雇用契約期間を更新しない、と告げられた。現在の雇用契約が切れる6月末か、次回は更新したとしても12月末で退職するように迫られたという。
労働契約法では、非正規社員が同じ会社で通算5年を超えて働いた場合、本人が希望すれば雇用期間を無期に転換できる。しかし、パタゴニア日本支社ではパートの雇用期間を5年未満に制限する「不更新条項」を設けている。藤川さんはこの条項の撤廃を求めて労組結成を呼びかけ、昨年7月に組合員4人で労組が発足。現在、組合員は10人を超えた。
労組は今年2月から、ネット上で「非正規スタッフの無期転換逃れ撤回を求めます」と署名を呼びかけ、これまでに1万7千人を超える賛同の署名が寄せられている。
藤川さんは会社側の通告について「雇用期間の『無期転換』は働き手の権利。評価制度と結びつけて雇い止めの理由とするのは不当だ」と批判する。
一方、会社側は「個別の従業員に関する事項は答えられない」(広報担当者)としている。
パタゴニアは環境問題に熱心に取り組む企業として世界的に有名だ。環境負荷の少ない素材を衣服に使うなどの試みを進める一方、労働問題にも積極的な発信を続けている。
日本支社をめぐっては今年3月、労組宛ての郵便を組合員に渡すのを会社側が拒んでいるのは「不当労働行為だ」として、労組が北海道労働委員会に救済措置をとるよう申し立てた。(編集委員・堀篭俊材)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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