同性カップルの関係を公的に認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体が出ている。しかし、男女の夫婦と同じ法的保障はないため、当事者たちが望むのは法律上の結婚だ。
パートナーシップ制度は2015年、東京都渋谷区と世田谷区で全国に先駆けて始まった。原告弁護団によると、全国78自治体で導入された(3月1日現在)。札幌市は17年6月、政令指定都市としては初めて制度を始めた。
札幌市はパートナーシップ宣誓制度を、性の多様性を尊重する取り組みと位置づける。対象は、20歳以上の市民か転入予定者の同性カップル。いずれかが性的少数者のカップルや、心身の性が異なるトランスジェンダーを配慮して戸籍上異性間でも利用できる。
男女共同参画課によると、登録したカップルは112組。戸籍上の性別だと、女性どうし75組、男性どうし35組、異性間2組だった(いずれも1月末現在)。
所定の手続きをすると、公的な証明となる「宣誓書受領証」を受け取れる。しかし、法的な効力はなく、健康保険の被扶養者や子どもの共同親権、所得税の配偶者控除などは受けられない。一般的にパートナーシップの証明は、行政や企業で男女の夫婦と同等の対応を求めるものとされている。札幌市では20年から、市営住宅への入居や市の犯罪被害者等支援制度を利用する際に家族として利用できるようになった。
ほかの自治体でも制度導入の検討が進む。函館市は22年度中の開始をめざし、21年度予算に検討のための費用100万円を計上した。北見市の辻直孝市長は昨年12月の定例市議会で、「多様な性のあり方や人権が尊重され、未来に希望を持てる社会を実現するための大変重要な施策」と述べ、導入に意欲を示した。旭川市や帯広市などで導入を求める要望書が当事者団体から提出されている。
パートナーシップ制度では不平等がうめられないと感じる当事者は少なくない。
元北海道職員で社会福祉士の佐々木カヲルさん(51)は女性パートナーと札幌市で暮らす。戸籍上は女性だが、「女ではなく、男ともいえない」と自認している。
パートナーとは18年、パートナーシップ宣誓をした。当時は道職員。専業主婦だったパートナーを被扶養者として職場に届け出た。関係性を証明するため宣誓書も提出した。しかし、道や共済組合、職員互助会からは戸籍上同性の扶養関係を認めることはできないといわれた。
扶養関係が認められた場合と比べると、月6千円ほどの扶養手当を受け取れないうえ、寒冷地手当は月1万円ほど低い。パートナーは健康保険の被扶養者になれないため、約5万円を払って国民健康保険に入った。佐々木さんは「性的指向によるセクシュアルハラスメントだ」と感じ、退職を選んだ。
パートナーとは独自の契約書を結んだ。「できるだけ婚姻における配偶者と同等の権利義務を得られるようにするために合意する」として、生活費の共有や、病院で戸籍上の家族に優先してパートナーの病状説明を受けることなどを明記する。遺言書をつくり、死後の財産の贈与についても決めている。「どれだけ人生を一緒に過ごしていても、お互い法的には結びつきのない他人なので」
パートナー宣誓の制度は、性的少数者の数を可視化するためには大切だと思う。「これだけ実際に身近にいるのだと感じてもらえる」からだ。
同性婚訴訟で国側は「婚姻によらずに1人の相手を人生のパートナーとして継続的な関係を結ぶことは可能」と主張した。これに対し、佐々木さんは「婚姻にどれだけメリットがあるのか気づいてもらいたい。結婚ができない同性カップルが置かれている状況を想像してほしい」と話す。
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同性婚が認められないのは「婚姻の自由」を保障する憲法に反するとして、北海道内の同性カップル3組が国に賠償を求めた訴訟の判決が17日午前11時、札幌地裁で言い渡される。原告側は、同性婚を認めない民法や戸籍法は憲法24条が保障する婚姻の自由を侵害し、14条が定める「法の下の平等」にも反すると主張している。原告の女性は「異性カップルと同じ権利を与えてもらいたい」と訴える。
弁護団の加藤丈晴弁護士は「もし法的効果のあるパートナーシップ制度ができたとしても、同性カップルの尊厳は回復されない。男女カップルと同性カップルが異なる扱いをされてはならないのです」と話す。
北海道LGBTネットワークは17日正午から、傍聴できなかった人向けに「速報集会」を開く。場所は札幌市中央区民センターの娯楽室。無料、予約不要。また、原告弁護団は同日午後6時半から、ユーチューブのアカウント「M4AHokkaido」(https://www.youtube.com/watch?v=pkxXZMpH3AU)で、報告イベントを配信する。(川村さくら、前田健汰)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル