わいせつな写真集「ビニール本」(ビニ本)を販売したなどとして、都公安委員会が古書店大手「まんだらけ」(東京都中野区)の2店舗に対して風営法に基づいてアダルト商品を180日間販売停止とする行政処分を決定した。同社は朝日新聞の取材に、ビニ本を販売した容疑が不起訴になった後の行政処分を「不可解だ」などとコメントし、さらに「世の良識を問いたい」とする追加のコメントを出した。
同社の社長らは、性器が確認できる写真などが掲載されたビニ本を販売したなどとして5月にわいせつ図画頒布容疑などで書類送検された。東京地検は犯罪の嫌疑があったと認定する一方で、刑事処罰は求めない起訴猶予処分としていた。風営法は、わいせつ図画頒布の罪を犯した場合、公安委員会はわいせつな物品の販売営業の停止を命じることができるとされている。
「よほどこの案件に思い入れがあるようで」
11日付で都公安委から販売停止処分を受けた同社は、朝日新聞の取材に「本件は不起訴になった事件ですが、そこに行政処分が下されるという不可解な案件になっております。弊社としては素直に納得はできかねますが、起訴も行政処分もともに警視庁からのお達しと思われますので、よほどこの案件には思い入れがあるようです。弊社はあまりこの件にいつまでも関わって時間を浪費したくありませんので、甘んじてお受けさせて頂く所存です」とのコメント。
その後、さらに「別の回答」としてコメントを追加した。
新たに出したコメントの全文は、以下の通り。
ビニ本は「昭和の風俗・風物史」「文化的遺産」
「弊社としては昭和の風俗・風物史としてビニ本を捉え、文化的な遺産として後世に残すべく努力しておりましたが、先般それが認められなくて、警察による捜査、書類送検されましたが不起訴に至っております。書類送検につきましては異議もありましたが、そもそも不起訴になりましたので、格別異議申し立てもしておりません。しかしながら同じ警視庁から、不起訴にもかかわらず今度は行政処分という一種の罰則の適用を求められております」
「よく考えますと検察の決定を無視しての警察処分ですので、どこかゴリ押しで意地を押し通そうという気配もございますが、これ以上係争を続けることも時間の無駄になりますので、このまま甘んじてお受けしようと思います」
何と温かみや風情があることか
「私たちが育った文化はアカデミックなものばかりではなく、路地裏の日の当たらない場所で生まれたものにも人としての有り様の恩恵は受けてきているものです。昨今のWeb上に氾濫(はんらん)しておりますわいせつ動画などに比べますと、昭和のビニ本の何と温かみや風情があることでしょうか。それを現状のわいせつWeb動画を放置して、わざわざ検挙し、不起訴になったにもかかわらず行政処分まで繰り出して罰則適用をする必要があるのでしょうか。そこは世の良識に問いたいところではあります」(大山稜、御船紗子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル