12年前に見た、あの帯状の津波が、今でも脳裏をよぎる。
2011年3月11日午後2時46分、佐藤真司(まさし)さん(55)は仙台市中心部のビルで働いていた。大きな揺れの後に窓の外を見ると、自宅がある海岸近くの景色が一変していた。波が家屋や田畑を押しつぶし、妻がいる自宅や息子が通う保育園に迫っていた。
妻に電話しようとしたが通じなかった。
「無事であってくれ」
自宅近くの避難所まで雪の中を約10キロ歩いた。700人以上が身を寄せた避難所に聞き覚えのある声が響いた。「まさしさん!」。駆け寄る妻と手を取り合い、5歳の息子を抱き上げた。
日付が変わるころ、避難所に毛布が届いた。
数に限りがある。急いで家族…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル