コカインを摂取したとして、麻薬取締法違反の罪に問われたミュージシャンで俳優のピエール瀧(本名・瀧正則)被告(52)の判決公判が18日、東京地裁で開かれ、小野裕信裁判官は懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。判決言い渡し後、小野裁判官は、5分以上にわたる説諭を行い、所属するバンド「電気グルーヴ」の前身のバンド名にちなみ「人生」について瀧被告に問いかけた。瀧被告は時折うなずきながら、裁判官の言葉を神妙に聞いていた。
■被告の表現を引用して動機認定
午前11時ごろ、瀧被告は黒のスーツ姿で入廷。緊張した様子で証言台の前に立った。
小野裁判官は、瀧被告が被告人質問でストレスを「心にたまる『おり』のようなもの」とした表現を引用し、犯行の動機を「ストレスや、気持ちの中にある『おり』のようなものを限られた時間の中で解消するために使用した」と認定。
「違法薬物に対する親和性が表れた常習的な犯行で、安易に違法薬物に頼ったとの法的非難は免れず、同情の余地はない」と指摘する一方、「主治医の指導に従って治療を受け、違法薬物を絶つと誓約している」などとして、執行猶予が相当と判断した。
小野裁判官は判決言い渡し後、控訴や執行猶予についての説明をした後、「有名人だからといってことさら刑を重くしたり手心を加えたことはありません」と切り出し、「ただ言っておきたいと思ったことがあります」と続けた。
■「インディーズ時代によく出てくる言葉」
裁判官の説諭は一般に、一言、二言、声をかけることが多いが、小野裁判官は「引っかかったことがあります」として、瀧被告に証拠の写真を示し始めた。
裁判官「漢字2文字が書いてあります。読んでいいですか」
瀧被告「はい」
裁判官「『人生』と書いてあります」
傍聴席から写真を見ることはできなかったが、小野裁判官は証拠の中にあった「人生」と書かれた張り紙を、誰かが瀧被告に書いたものとして話を続けた。「どうして(『人生』と)貼ってあるのか検討しました。インディーズ時代を含めて(瀧被告に関することで)よく出てくる言葉だと分かりました」
瀧被告が所属するバンド「電気グルーヴ」のインディーズ時代のバンド名は「人生(ZIN-SAY!)」。電気グルーヴの相棒として長年、音楽活動を続けてきた石野卓球氏は、瀧被告が逮捕された後の3月24日、ツイッターで「“Zin-sayは電気グルーヴ、電気グルーヴは人生”」とつづり、ネット上では、石野氏が瀧被告への思いを語ったものではないかと話題になっていた。
■「3つのことを問いたい」
小野裁判官は「3つのことを問いたい」と瀧被告を見据え、「人生をどうしたいのか。人生の持つ意味とは何か。『人生』と書いてくれた人の気持ちに答えられているか」と語りかけた。
その上で「あなたが芸能界に復帰できるのか、復帰できても何年先になるのかは分かりません。でもいつか薬物のドーピングがなくても、芝居がいいとか、これまでより活躍していると、社会の人から見てもらえる日がくることを切に祈っています」と述べた。
瀧被告は被告人質問で「音楽をつくることはこれからもやっていこうと思う」と復帰への思いをにじませ、薬物を絶つためには「孤独感やストレスを抱えてはいけない」とも語っていた。
小野裁判官は「謝罪やカウンセリングの中で迷ったり悩んだり孤独になることがあるんじゃないかと思います。そのときは『人生』と書いた人の気持ちに答えられているかを、胸に手を当てて考えてほしい。それがあなたがいるべき場所を見失わない上での大切なことじゃないでしょうか」と締めくくった。
瀧被告は手を前に組み、時折うなずきながら説諭を聞いていた。最後は検察側や傍聴席に一礼して退廷。弁護士を通じて発表したコメントにはこう記されていた。
「こんな自分でありながらも、励ましや応援の言葉を表明してくださった多くの皆さまには心より感謝しております。本当にありがとうございました。二度とこのようなことを起こさないよう戒めてまいります」
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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