忘却の時代に、忘れられないものを――。グーグル、スマートニュースを経て、ウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」編集長として日本の移民事情などを伝えるライターの望月優大さん。情報があふれ、「ファスト化」が加速するネット空間で、「複雑さ」を発信し続けています。複雑さを解きほぐし、共生するために、それぞれが「ルーツ」を見つめ直すことを問いかけます。
記事で問いかけ → 皆さんの声 → 望月さんのRe:
新サイト「Re:Ron」では、記事の末尾にある「おたよりフォーム」から望月さんにあなたの声を伝えられます。読者の皆さんからいただいた「おたより」をもとに、望月さんに改めてお話をうかがい、記事にする予定です。
自分にとって大切なルーツはありますか?
――なぜ「ルーツ」なのでしょうか。
移民や外国人のテーマに関心を持つと、ルーツという言葉は避けて通れません。同じ日本社会で生きる人々が、どんな国や地域と、どんなつながりを持っているか。それらを学び、尊重することはとても大事なことです。
同時に、ルーツがあたかも「日本人以外」にのみ関わるものと捉えられがちだとも感じています。自分が「日本人」だと認識している人こそ、「日本」という国家や社会の道筋、これまで何をしてきたのか、何をしてこなかったのかを知ることが重要です。そこには「他者」との様々な関係が含まれます。
マイノリティーが直面する種々の問題も、その根源にはマジョリティーの自分たちのことに対する理解、解像度の低さがある。「ニッポン複雑紀行」は、日本社会がどんな姿をしてきたのかを知り直し、考え直すきっかけでありたいと考えています。
――ルーツを問い直すことは複雑さに向き合うこと、だと。
現実には、のっぺりとした単純明快な「日本」があるわけではなく、色々な人々の集合、歴史の蓄積としてある。でもその複雑さがどれだけ見えているか。忘却したり切り捨てたりしていないか。
ひとくちにルーツといっても、血縁や親族、生まれ育った場所だけでなく、言葉や文化、経済的な階層、家庭の状況など様々です。複雑であるというのは当たり前のこと。自分や自分たちのルーツを知ること、考えることが、自分以外の誰かのルーツを大切にすることにもつながっていくのだと思います。
「これは無罪じゃないか」
――キーワードでもある「複雑さ」にどう向き合っていますか。
3月に最高裁で、非常に珍しい逆転無罪判決が出ました。
孤立出産で死産した双子の遺体を遺棄したとして罪に問われたベトナム人技能実習生の裁判で、ニッポン複雑紀行で取り上げました。2021年6月に熊本地裁での裁判が始まる前から、裁判の経過を追いかけながら発信を続けてきました。有罪、有罪と続き、最後にひっくり返った。
背景として、妊娠した技能実…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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