アイドルグループ「NMB48」が、ファン投票によって次作シングル曲やカップリング曲の参加メンバーを決めるという試みを始めた。NMBとしてはデビューから11年余りで初めての取り組みだ。上位獲得をめざし、メンバーやファンたちの活動は熱を帯びているが……。
速報発表…若手の「7期生」から7人
2月23日。大阪・難波のNMB48劇場の壇上に、キャプテンの小嶋花梨(かりん)(22)らメンバー5人が緊張した様子で並んだ。
前日の22日に始まったファン投票イベント「NAMBATTLE(ナンバトル)2~愛~」の、第1回速報発表の日だ。23日時点の得票数に基づき、24~1位に入ったメンバーが順に読み上げられた。
速報1位は小嶋で、4694票。上位7人は2千票を超えた。投票開始から1日で、相当数のファンが票を投じた様子がうかがえる。中でも、コロナ下の2020年秋に活動を始めた若手の7期生から計7人が速報ランクインし、躍進ぶりが目をひいた。
速報1位の小嶋は「言葉にならないというのはこういうこと……」と感動を口にし、1位を狙う決意を以前から語っていた上西(じょうにし)怜(20)=速報3位=は「速報から1位を狙っていたので悔しいですが……」と言葉を詰まらせ、「最後は笑って終われたらうれしい」と語った。
今回の投票イベントは、NMB48内のチームやメンバーが様々な指標で競い合う「NAMBATTLE2」の個人戦部門で、最終結果の発表は3月27日。27枚目のシングル曲を歌う「シングル選抜」(14~1位)と、カップリング曲を歌う「アンダーガールズ」10人(24~15位)が決まる。
投票券は26作目シングル曲「恋と愛のその間には」のCDに特典として封入されている。NMB48の各種WEBサービス会員らにも投票権があり、1人で複数回の投票が可能だ。
ファンとメンバーが考える「投票イベント」の位置付け
シングル曲の選抜メンバーはこれまで、個々のメンバーの経験や実力、実績などを勘案して運営会社が選び、顔ぶれが大きく入れ替わることは少なかった。
投票イベントは、若手にとっては「先輩たちと同じ土俵で戦えて、あわよくば『下克上』を狙えるチャンス」(ある若手メンバー)でもある。
NMB48は昨春、コロナ下で大人数での活動や公演が厳しくなった状況を受け、所属メンバーを少人数制の6ユニットに再編成し、互いにパフォーマンス力などを競って優勝を争う「NAMBATTLE」の第1弾を開催。ユニットどうしが切磋琢磨(せっさたくま)して競い合う、筋書きのないドラマが好評だった。
7期生のファンだという男性は「コロナ下で活動の場が狭まり、特に若手メンバーは自己PRの機会が減った。ファンとメンバーが一体感をもって盛り上がれる投票イベントは楽しい」という。一方、「過熱すると、メンバーのプレッシャーにもなる。結果よりもプロセスを楽しむ気持ちでいたいし、メンバーもそうあってほしい」と語った。
コロナ禍で…変わる活動、ファンの意識
ファン投票といえば、AKB48グループが2009~18年に開催していた「選抜総選挙」が知られる。2010年代のアイドルブームに火をつけ、社会現象にもなった。
だが「すでに時代は変わり、同一視はできない」とアイドル文化に詳しい構成作家・ライターのポッター平井さんはいう。「コロナ下でアイドルの活動を支える素地や土壌も変容してきた。ファンの意識も同じではない」
アイドルとファンを結びつける場も、様変わりしている。
ライブパフォーマンスや「握手会」などを通じて人気を伸ばした先輩たちに対し、若手はSNSでの発信や動画配信などに注力。「独自のコンテンツ力」で台頭している。「企画やプロデュースにたけた人は、リモート時代ゆえの強みを発揮できるのでは」というのが平井さんの見方だ。
画面越しの勝負は、発信ツールの選び方がカギとなる。数十秒の短い動画が主流の動画投稿アプリ「ティックトック」を操るメンバーがいれば、長尺の動画投稿に適したユーチューブを活用するメンバーもいる。ダンスやトークなど各自の強みに応じて最適なツールを選べるかどうかも鍵だ。7期生の早川夢菜(19)がライブ配信サービス「SHOWROOM」を通じて400日以上欠かさず動画配信を続けるなど、それぞれがリモート時代におけるファンとの交流方法を模索している。
「自分の強みを最大化して見せるプロデュース力がものを言う時代になったともいえる。そこでどんな勢力図が新たに描き出されるのか。NMB48内での競争にとどまらず、アイドルとファンの『未来』を占うものとして注目しています」(阪本輝昭)
順位や数値に換算できない価値とは…「NMB10年生」の視座
今回の「投票イベント」は、飛躍を狙う若手たちのための催しなのか――。NMB48で2012年に活動を始めた3期生の加藤夕夏(24)、4期生の川上千尋(23)はともに「ちょっと待った!」と声を上げる。
加藤は卓越したダンススキル…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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