数字は語る
目の前のステージで踊り終えたマリア(仮名)が席へやって来た。「3月に日本来た。日本語は少しだけ」とはにかみながら。
23歳、フィリピンのマニラ近郊の出身という。母国ではデパートの販売員をしていたが、「給料が安くて日本で働きたかった。でも、パンデミック(感染症の大流行)で入国できなくて」。
まばゆいミラーボールの下で話し込むと、最後にそっと打ち明けた。
「3歳になる子どもがいる。ビザは6月までだけど、またアプライ(申請)したい」
関東地方にある繁華街。雑居ビルに入居するフィリピンパブは平日にもかかわらず盛況だった。在籍するタレントは10人以上。その1人であるマリアは、興行ビザで初来日したダンサーだ。
興行ビザとは、演劇や演奏、スポーツなどの活動を行うために入国する外国人に発給される。海外の歌手がコンサートを開いたり、外国人選手がプロ野球の試合に出たりする際に必要になるものだ。
「3月から各地の店にフィリピン人タレントが戻ってきている。コロナの水際対策がやっと緩和されたからね」
東北地方の外国人芸能プロモーターの男性はそう話す。
現役プロモーターが明かす興行の現状
ここでいうタレントとは興行の在留資格を持つ歌手やダンサーのこと。ほぼ全員が女性で、入国後は契約を交わした店に出演する。「いま入っているのは、2020年に在留資格の認定が下り、2年待たされていた人たち。在留期間は3カ月が多いよ」
新型コロナウイルスの影響による入国制限で、20年に発給された入国用ビザは111万8025件と前年から87%減だったが、さらに21年は1999年以降で最少の9万306件まで落ち込んだ。このうち興行ビザは1731件で、フィリピン人へはわずか40件。19年と比べると99%減り、過去20年で最も少ない。
この興行ビザと切っても切れ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル