台風15号で甚大な被害を受けた千葉県南部には、今もブルーシートに覆われた家が点在する。壊れた家の修理に時間がかかる上、補助を受けたとしても残りの修理費が払えないため、住み慣れた家を去る人もいる。
房総半島南端の漁師町、館山市布良(めら)地区。今月26日の夜、橋本博一さん(61)は電気ヒーターの前で手をこすり合わせた。畳をはずしてブルーシートを敷いた床や、はがれた天井板の間からは冷気が吹き込む。「寒くて眠れやしない。苦しいよ」
台風15号が襲った9月9日、橋本さんは、ひとりで暮らす築約40年の木造2階建ての2階の寝室で轟音(ごうおん)を聞いた。窓をつき破るような強風が吹きつけ、家が揺れていた。
屋根瓦が飛び、窓ガラスがはずれ、天井板がはがれ落ちた。命の危険を感じて1階に避難し、夜通し廊下にたまった水を玄関にかき出した。全7部屋のうち台所と6畳間をのぞく5部屋が雨にぬれた。
10日ほど後、やっと停電が解消し、ボランティア約5人の手を借りて屋根にブルーシートを張った。「助かった」と思ったが、雨風が吹くとすぐにはがれ、1カ月で3度張り直した。その後も連日、屋根に上って修理をしたが雨漏りは収まらなかった。近所では修理をあきらめ、地区を離れる人たちもいた。
9~10月に相次いだ3度の台風で、家はみるみる傷み、全壊と判定された。床は反り返り、壁には白いカビが生えた。エアコンや電気毛布は壊れ、残ったのは電気ヒーター1台だけ。「もう疲れ果てた。死んでもいい」。そんな思いも頭をよぎる。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル