福家司
鹿児島県阿久根市で雨ざらしになっていた寝台特急「ブルートレイン」の寝台車2両が移設され、18日に香川県観音寺市に到着した。善通寺市のうどん店主、岸井正樹さん(60)が車両を修繕し、今秋にも四国霊場八十八カ所の遍路宿としてよみがえらせる。
2両は15日夜、別々のトレーラーに牽引(けんいん)されて阿久根を出発。2人用個室「デュエット」車両には、「阿久根のみなさん、お世話になりました。観音寺のみなさん、よろしくお願いします」との横断幕が掲げられた。
一般道を夜間走り、宮崎県を経由し、大分県の臼杵港からフェリーで愛媛県の八幡浜港へ。出発から4日目の18日朝、移設先の四国霊場六十六番札所、雲辺寺に登るロープウェーの山麓(さんろく)駅駐車場に到着した。
鉄道ファンらが見守る中、あらかじめ敷かれた線路の上に台車を乗せ、大型クレーン車2台で1両ずつ車体をつり上げて慎重に設置した。
岸井さんは、2008年まで寝台特急「なは」(新大阪―西鹿児島間)などとして走っていたブルトレのデュエットと2段式のB寝台車の車両が、阿久根で雨ざらしになっているのを知り、1両100万円で買い取った。移設費用は岸井さん夫婦がクラウドファンディング(CF)で集めた資金のうち約900万円を充てたという。
CFに協力した愛知県大府市の宮田宜知(たかし)さん(48)は「実際に車両がレールの上に乗ったとき、ブルートレインに乗っていたころの感動がフラッシュバックして、しびれた」と話した。
今後は車両を塗り直し、傷んだ場所を修理したうえ、トイレ・シャワー棟などを併設した宿泊施設「四国遍路の駅 オハネフの宿なは・瀬戸」として、今秋のオープンを目指す。近くには岸井さんがうどん店を開くほか、花や亜熱帯フルーツの売店も開きたいという。2両の上には屋根も付ける。
岸井さんは「最高の気持ちだ。応援してくれた皆さんに見てもらい、歩き遍路の人がひと休みする時も接待したい。ブルートレインを知らない子どもにも触れてもらいたい」と話している。(福家司)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル