大阪地裁堺支部で争われた民事訴訟で、裁判官が当事者や傍聴人に、北朝鮮による拉致被害者の救出を願う「ブルーリボンバッジ」の着用が法廷内で禁止されたことをめぐり、近く国家賠償請求訴訟が起こされることになった。法廷での着用が認められなかったブルーリボンバッジは、北朝鮮で過ごす拉致被害者の救出を願い、歴代首相が日常的に着用するなど広く浸透しているバッジだ。にもかかわらず着用禁止とした判断は適切だったのか。今後の国家賠償請求訴訟では、裁判官の裁量のあり方が問われることになりそうだ。 「拉致問題解決は国民全員の願い。国や自治体も広く認めるブルーリボンバッジの着用を禁止する判断は常識的でなく、裁判官の裁量範囲を逸脱している」と話すのは、国賠訴訟の原告の一人、南木隆治さん。 南木さんらによると、そもそも法廷では、フジ住宅側を相手に損賠請求訴訟を起こした女性の支援者側が、ヘイトハラスメント防止を訴えた缶バッジを着用。裁判所側は当初問題視しなかったが、フジ側の支援者が、富士山と太陽を描いた缶バッジを着用したことに女性の支援者側が反発し、裁判所側はブルーリボンバッジを含む「メッセージ性のあるバッジ」の着用を禁じた。 「裁判をスムーズに進めたいと考えたのかもしれないが、常識を欠いた判断で、日本国民として嫌な気持ちになった」。南木さんはそう振り返る。 裁判官は裁判所法に基づき、「法廷警察権」と呼ばれる権限が付与されている。不規則発言を繰り返す人物に退廷を命じたり、暴れた人物を取り押さえたりと、法廷運営の「全権」が与えられているが、その裁量の幅をめぐってはこれまでにも問題となったケースがある。 代表的な事例が、平成元年に最高裁判決が確定した法廷メモ訴訟だ。法廷警察権に基づき、傍聴席でのメモを不許可とした裁判官の措置を、米国の弁護士、ローレンス・レペタ氏が問題視。国家賠償を求め、東京地裁に提訴した。最高裁は賠償請求そのものは退けたが、「メモは尊重に値し、ゆえなく妨げられてはならない」と指摘。判決では裁判官による裁量の逸脱を認めなかったが、これ以降、傍聴席でのメモが解禁された経緯がある。 元裁判官の工藤涼二弁護士(兵庫県弁護士会)は「裁判官の裁量は高度に認められるべきで、当事者も傍聴人も指示に従う必要がある」と説明する一方で、今回の堺支部の判断については「片方の言動や所有物の『メッセージ性』により、もう片方が不当な圧迫を受ける恐れがある場合には法廷警察権の発動を考慮する必要がある」と説明。そのうえで「ブルーリボンバッジは訴訟の中身とは関係がない。私なら法廷で外させることはなかっただろう」と指摘している。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース