花の生産地に変化が起きている。きっかけは4年前、長さに新しい規格が追加されたことだ。大きな花束から小さな花束へ。需要の変化に対応するためだったが、思わぬ好循環も生まれた。
70センチにばっさり 「今までは絶対なかった光景」
7月下旬、福島市のJAふくしま未来花卉(かき)共選場。お盆に向けた小菊の出荷作業が最盛期を迎えていた。
農家から納入されたばらばらの長さの小菊を、アルバイト従業員が10束ほど手に取り、機械を使って下半分の葉を落とす。さらに茎をばっさり。長さはどれも70センチだ。箱詰めされ、「未来小菊」として東京の卸市場へと出荷される。
「今までは、絶対になかった光景」と園芸係長の斎藤孝太郎さん。
切り花の値段は、市場の競りで決められる。その基準は長さと質。特に大輪菊やスプレー菊、小菊の場合は長さが重要だ。
自宅に飾りたい スーパーで花を買う人増加
以前は長さ80~90センチがランク上位「秀」の条件で、そこから段階式に値段が下がっていった。1970年後半~80年代前半から、業界の慣行として続いてきたという。
その結果、「質が良くても、長さが足りないと低価格になっていた」と卸最大手の大田花き(東京都)営業本部の大西克典副本部長は話す。
ただ、自宅用の花束なら50~60センチもあれば十分。長くても結局、花屋やスーパーでばっさりと切られることに。消費者の購入代金には、不要な枝や葉を捨てる費用も含まれていた。
大西さんによると、最近は、スーパーから短く切ってほしいと依頼を受けることも増えていたという。
この矛盾を解消するため、2019年、大田花きが事務局を担う「フラワー需給マッチング協議会」が、従来より短い「スマートフラワー」といわれる規格を追加した。菊の場合は70センチだ。スマートという言葉には、無駄を無くすという意味を込めた。
大西さんによると、リンドウやキキョウなど、長さよりも品質が重視される花もある。ただ、生産者は「長くて立派なものをつくって評価されたい」とい意識で花を育てるため、「1本単価」が重視されてきたという。
ただ、それではスーパーなど、同じ品質で、決められた量を定期的にほしいと考える顧客には対応しにくい。大田花きのまとめでは、94年には切り花を花屋で購入する人が7割で、スーパーマーケットで買う人は1割ほどだった。19年には、花屋とスーパーが3割強で拮抗(きっこう)している。従来の規格を保ちつつ、スマート規格を追加することで、販売先の需要に応え、新しい消費者を開拓することが目的だという。
生産地にも変化が起きている。
福島の小菊の場合、需要がピークになる7月に合わせて、4月下旬に植える。日照時間や気候を考えると、この時期が最適だ。
だが、雨が少なかったり、猛…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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