プール跡地整備に揺れる神奈川県平塚市 高潮など防災面で不安の声も(産経新聞)

 JR平塚駅から、南に歩くこと約20分の海岸。その浜辺に、ひっそりとたたずむ旧市営プール跡地の整備計画で、神奈川県平塚市が揺れている。民間事業者と連携し、約3万平方メートルからなる新しい公園を整備するという市の計画には、地域活性化の「呼び水」としての期待がかかる一方、台風による高潮などへの不安を抱える海沿いに暮らす住民からは、防災面で問題点を訴える声も上がっている。

 絶え間なく車が行き交う国道134号。その上にかかる歩道橋を上がると、老朽化などによって平成25年に閉鎖された龍城ケ丘プール跡地(同市龍城ケ丘)が見えてくる。現在は色あせた水色のコンクリートのくぼみとして、かつて大勢の人でにぎわいをみせたプールの名残を僅かに留めている。

 ■市のランドマークに

 プール施設の跡地は約7千平方メートル。この周囲一帯を約3万平方メートルからなる新たな公園に生まれ変わらせようとするのが、市の計画だ。最終的に、カフェやレストランといった飲食店や広場のほか、120台分の駐車場などを有する施設として整備するとしており、市は「市民全体の誇りとなる公園を目指す」としている。

 市みどり公園・水辺課によると、敷地の東側約2万4千平方メートルは、民間事業者が公園内に飲食店などを出店しやすくする「公募設置管理制度」(Park-PFI)を活用。西側約6千平方メートルは、ワークショップなどを想定した市民協働の場として整備するとしており、市は年間約70万人の利用客を見込んでいる。

 「平塚は海あり、山ありの良いまちだが、PR不足で生かすことができなかった」と語るのは、整備計画に賛同する市民グループ「平塚海岸チャレンジプロジェクト」の共同代表、青木考助さん(35)だ。

 国道134号沿いに観光の目玉ができれば、車を利用する観光客らを呼び込めるだけでなく、海や砂浜といった自然の魅力をアピールする機会にもなる。青木さんは「平塚のランドマークとなるように、どのようにしたら成功するかを市役所と市民で考えながら、より良いものをつくりたい」と力を込める。

 ■樹林帯の伐採も?

 一方で、プール跡地近くの海岸沿いに住む人々からは、防災上の面で不安視する声も上がっている。その渦中にあるのが、これまで砂浜からの飛砂などを防いできた、プール跡地東西に広がる樹林帯だ。駐車場などを含めた広大な施設を整備するためには、当然のことながら、この樹林帯の伐採が予想される。

 市の整備計画に、反対を表明する市民グループ「豊かな海と暮らす平塚市民の会」代表の田中良治さん(74)は「ここの木々は、砂や高潮などから、住む人たちの生命や財産を守ってきてくれた」と静かに語る。特に、近年は自然災害が多発していることも懸念の要因になっているという。

 問題の樹林帯は、今から30年ほど前、県が周辺を海岸緑地として整備したときに形成されたものだが、保安林としての指定は受けていない。そのため、市は「位置付けが異なる」(みどり公園・水辺課)と強調しているが、飛砂を防ぐ機能に関しては、一定の効果があることを認めている。

 ■事業者選定は来年

 市は「Park-PFI」のための事業者の公募を、8月下旬から始めた。事業者の選定は来年1月ごろで、基本協定書の締結は同年2月ごろを予定している。

 だが、既存の樹林帯の伐採について、事業者への要求水準書には「伐採は公園施設に必要な範囲とし、最小限度に留めること」「伐採等する場合は、代替方法で飛砂防備機能を確保すること」などと触れられているに留まり、数字やデータに基づく具体的な制限は、ほぼ示されていない。

 折しも今月12日には台風19号が列島を襲い、各地で甚大な爪痕を残した。市は「事業者には、これまで以上に防災面を充実させることを条件にあげている」と強調し、「事業者からプランを頂いた上で、来年2月以降に市民らとの意見交換会を検討する」としている。

 一方、田中さんは「木を切ってしまうと、今回のような災害が起きたときに、大きな影響があるのではないかと心配している。市の『事業者を選定するまでは分からない』という進め方は強引で、住民のことを考えていないのではないか」と表情を曇らせる。事業者の選定まで約3カ月。地域住民のコンセンサスを得るために、市には継続的な努力が求められそうだ。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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