女性が線路に飛びこもうとしている。止めなければ――。ホームで気付いた電車の運転士と、居あわせた客がとっさに協力し合い、自殺を思いとどまらせた。「そうあることではない」(警察関係者)と話す連係プレーが一人の命を救った。
福岡県警久留米署は4月27日、西日本鉄道社員の千代島信義さん(56)とアルバイトの内川紗希さん(20)に感謝状を贈った。
騒ぎがあったのは、昨年12月26日の午後10時ごろ。西鉄天神大牟田線の上り普通列車を運転していた千代島さんは、花畑駅(久留米市)に停車後、追い越していく急行を誘導するためホームに降りた。
見ると、若い女性が1人で立っている。「初めて電車に乗るような、不自然な感じだった」
急行を案内しようと声をかけたが、女性は、ぼそぼそと何かをつぶやいてホームの端へ向かった。
千代島さんは慌てて駆け寄り、女性を引っ張る。女性は必死に線路に近づこうとする。その繰り返し。急行列車が迫る中、周りにはだれもおらず、助けも呼べない。
その時、線路を挟んだ下りホームに女性客の姿が見えた。「すみません。駅員を呼んできてください」
声をかけられた内川さんはサンドイッチ店での仕事を終え、帰宅するところだった。事態に気付き、エスカレーターを駆け下りて改札の駅員に説明、上りホームへ駆け上がった。
駅員らも数人集まったが、全員男性。横たわって暴れ、泣き叫ぶ女性を押さえ込むのに気後れしていると、内川さんが女性に覆いかぶさった。
「今まで頑張ってきたのに。死にたい」。そう漏らす女性に「頑張らなくていいよ」と声をかけた。自分も気持ちが落ち込むことはある。その時のことを思い出し、出た言葉だった。
女性が落ち着いて救急隊が引き取るまで30分ほどあっただろうか。内川さんはずっと手を握っていた。千代島さんは「本当に助かりました」と振り返る。
「女性が元気になってくれればいいのですが」。2人の願いだ。(小陳勇一)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル