JR折尾駅(福岡県北九州市八幡西区)で、50代の男性がホームから転落し、線路上に倒れ込んだ。若い男性6人が、安全な場所に移動させるなどの救助に関わった。救助された男性はお礼を言いたいと考えた。でも連絡先がわからない。折尾駅では感謝を伝える張り出しをし、連絡してと呼びかけた。
9月27日午後9時ごろ、列車からおりた男性は階段に向かう際、ふらついて反対側の線路に転落した。頭を線路に打ち付けて出血。意識がないようで起き上がってこない。
近くにいた若者が転落に気づいて動き、階段をおりようとした若者が戻ってきた。50メートルほど離れたエスカレーターに乗ろうとしていた若者たちも駆けつけた。
6人のうち、1人が非常ボタンを押し、2人が事務所にいる駅員に伝えようと走った。3人は線路に下りて、1人が脇付近、もう1人が足を抱え、ホーム下の空洞に動かし、列車にひかれないようにした。男性のカバンはホームに上げた。
この間、博多方面からの列車が迫っていた。闇夜に浮かぶライト。駅周辺は緩やかなカーブになっていて、若者たちにはこの線路に列車が入ってくるように見え、必死で助けようとしたのではないか。当日当直だった彌榮(みえ)俊介助役(47)らはそう推測する。
列車は隣のホームに入った。実は、男性が転落した側の線路は今は使われておらず、列車は入ってこないのだという。
男性は救急隊員たちによって、担架に乗せられ、ホーム上に引き上げられ、救急搬送された。
翌日、転落した男性が駅にお礼を言いにきた。頭や腕、腰にけがをしているようだった。若者たちに救助された記憶はなく、駅員が説明するとお礼を伝えたいと言ったという。
だが駅員が当日、連絡先を聞いていたのは1人だけ。何人が救助に関わったのかもわかっていなかった。防犯カメラの映像を見返して、6人が関わり、どう動いたのかがわかった。
「お礼とお尋ね」という張り出しをつくり、駅3カ所に張った。まだ直接お礼を伝えられていない人がいるので、連絡してほしいと。若者2人は知り合いのようで若松方面に行く列車に乗った。張り出しは若松駅にも出した。
野田一洋駅長(50)は「20代とみられる男性6人が、しっかり役割分担して見ず知らずの男性を救助してくれた。勇気があり感動する」と語る。
若者の1人は「転落した男性はどうなりましたか」と聞いてきた。ほかの2人も連絡先がわかった。若松方面に行った若者2人の連絡先はまだわかっていない。
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救護活動への感謝を伝える折尾駅の張り出しでは、「まずは『非常ボタン』を押して」と、赤字と下線で強調した。こうした事案が起きた場合、列車がホームに入るのを防ぐため、まず非常ボタンを押すよう野田駅長らは呼びかける。
折尾駅のホームには非常ボタンが12個、約50メートルおきに置かれ、押すと駅付近の信号が赤く点滅し、運転士がブレーキをかける。
非常ボタンが押されたことは1階事務所にいる駅員もわかるようになっている。駅員専用の非常ボタンもあり、押すと、駅周辺にある他の信号も赤にかわる。今回も、駅員がホームの非常ボタンが押されたことにすぐに気づき、駅員専用の非常ボタンを押した。仮に信号の変わり目で列車が通過した場合、自動的にブレーキがかかるようになっているという。
今回、列車が駅に入ってきたのは、非常ボタンを押す前だったと考えられる。幸い列車は別の線路に入ったが、線路に下りる前に必ず非常ボタンを押す必要があるという。(祝迫勝之)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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