ポピュリズムが日本ではまだ流行らないのはなぜか?静かに迫る「民主主義の危機」(BUSINESS INSIDER JAPAN)

エリートが仕切ってきた政治・経済体制に異議を唱え、「大衆」の権利こそ尊重すべきだ──。そんな思想に基づき、極端な政策を主張するポピュリズム(大衆迎合主義)が欧米先進国で広がっている。

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保護主義や反移民を掲げるトランプ大統領のアメリカ、欧州連合(EU)離脱に動くイギリス、バラマキ色が強い政策を進めようとしたイタリア……。

日本でも、7月の参院選で「消費税廃止」「デフレ脱却給付金」といったバラマキ政策を掲げたれいわ新選組が2議席を獲得。山本太郎代表自ら「私はポピュリスト」と公言するが、まだ国政レベルでポピュリスト政党が大きな影響力を持つ状況とは言えない。

世界各国でポピュリズムが急速に広がっている背景は?日本の今後は?歴史や政治にも視野を広げて深層に迫る経済分析に定評がある、BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎さんに聞いた。

「格差拡大⇄低成長」の悪循環

ポピュリズムが広がった最大の要因が「経済格差の拡大」であることは、多くの識者が指摘している。河野さんはそのメカニズムを次のように説明する。

「先進国では1990年代半ば以降、グローバル化の加速とIT革命によって、製造業の生産現場が新興国などへ移転し、国内で中間的な水準の賃金が得られる仕事が失われていきました。最近では肉体労働だけでなく、計画立案や報告書作成といった頭脳労働まで人工知能(AI)に置き換えられたり、オフショアリング(海外への業務委託)の対象になったりしています。

こうして中間所得層が細る一方、経営幹部や一部の高収益企業の社員といった高所得層にますます富が集中し、所得の二極化が進んでいます」

経済成長は健全な競争によって促されるが、自由競争のもとで生まれる「敗者」を放置したままでは社会の安定は保てない。だから先進国では程度の差はあっても、たくさん稼いだ人に税金を多く納めてもらい、所得が低い人に社会保障サービスなどの形で「再分配」して経済格差をならす政策をとってきた。

「お金を使い切れない富裕層と、使うお金がない貧困層への二極化が進んだ結果、国全体としての個人消費は以前ほど活発でなくなり、先進国の経済成長は停滞感が強まっています。成長が鈍ると税収は減り、再分配の原資が乏しくなります。

先進各国は高成長がもたらす税収増を当て込んで年金などの社会保障制度をつくってきたので、低成長と高齢化が財政難を招いており、社会保障サービスを抑制せざるを得なくなっています。

少し前まで『経済格差の存在は、人の利己心(自分の利益だけをはかる心)に作用して経済成長の原動力になる』と主張する研究者も少なくありませんでした。ところが今起きていることは、低成長が再分配メカニズムの機能低下を招き、それによって広がった格差がさらに低成長をもたらす、という悪循環です」(河野さん)

その結果、主に中間層の支持を得てきた中道政党が衰える一方、過激な主張をするポピュリスト政党が「中間層から滑り落ちた人々」の不満の受け皿として勢力を伸ばしている、という構図だ。


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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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