新型コロナウイルス対応に障害が生じることは避けなければならない――。安倍晋三首相は辞任の意向を示した28日の会見で、新たな対策にめどが立ったことを強調した。政府のコロナ対策の影響を受け続けてきた医療、観光、教育の現場は、次のリーダーには何を求めるのか。
打ち出されたGoTo、距離を感じた医療現場
「現実と遊離していた感がある」
国にPCR検査体制の拡充や補償を伴う強制力のある休業要請へ向けた法改正などを求めてきた東京都医師会の尾崎治夫会長(68)は、安倍首相の新型コロナ対応をこうみる。
「アベノマスク」の全戸配布や、ミュージシャン星野源さんの楽曲に合わせた動画投稿が一例だ。また、経済を重視する施策は打ち出すのに、検査件数はなかなか増えなかった。「どんな情報を得てどう考えていたのか、わからなかった」
医療現場との距離を感じたのは、感染者数が再び増えるなか政府の観光支援策「Go To トラベル」が動き出したころだ。国は重症者が少ないとして医療提供体制は「逼迫(ひっぱく)していない」と言い続けた。
軽症患者でも、医療従事者は防護具を身につけるなど負担を強いられる。「広く現場の声を聞こうとしなかったように見える。次の首相は国民が何を感じ、医療従事者がどんな問題にぶち当たっているのか、想像力を持って拾い上げてほしい」と話す。
東京都中央区保健所の山本光昭所長(60)は、アベノマスクに多くの人とカネをつぎ込む合理性はなかったと分析する。首相の情報発信不足がマスクの買い占めや保健所への問い合わせの殺到を招いたとして、「いかに発信するかはトップの責任だ。国民に合理的な行動をとってもらえるような発信をして欲しい」と指摘する。
安倍首相は辞任の意向を示した28日の会見で、冬までに1日20万件の検査体制を目指すと掲げた。23区で最初に自前のPCRセンターを開設するなど、積極的に検査体制を整えてきた墨田区保健所の西塚至所長は「ここまで検査数を絞ってきたのに、国の姿勢がコロコロ変わり、その対応は現場に押しつける。新しいリーダーは科学的知見に基づき、明確にビジョンを示すべきだ」と訴える。
感染防止と観光振興、両方狙い中途半端に
新型コロナウイルスの影響で大打撃を受けた観光業界。安倍政権は旅行費用の一部を助成する支援策「Go To トラベル」を約2週間前倒しして7月22日から開始した。
だが、感染が再び拡大し始めた時期とも重なり、特に沖縄県では8月に入ってから、人口10万人あたりの直近1週間の感染者数が29日連続で全国一に。県は7月31日から緊急事態宣言を継続中だ。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル