「ここに住み続ける自信はありません」
東京都内のマンション。60代男性は、新築分譲時から30年近く暮らすマンションを手放し、一軒家へ住み替えることを検討している。
妻と娘との3人暮らし。暮らし続けるつもりで購入した。
だが、分譲マンションでは避けられない「理事の負担」は、考えていた以上だった。
36戸のマンションで、理事は2年交代の輪番制。10年に1度ほど回ってくる。理事長は理事の中からくじ引きで決める。
男性はこれまでに3回の理事を務め、そのうち2回は理事長だった。
直近では、この8月まで理事長を務めていた。「犬のフンが落ちている」「リフォーム業者の施工内容が気になる」。住民から玄関のチャイムを鳴らされたり、郵便受けにメモが入れられたり、メールが届いたり。
中にはクレーマーのような人もいて、住民同士のトラブルに巻き込まれることもあった。管理会社や管理人とのやり取りもしょっちゅうだ。
電球切れや植木の枝切りなど、共用部のメンテナンスは基本的に管理会社が対応する。しかし「費用が高い」という声があがって、別の業者を探して相見積もりをとることも年に4、5回はあった。作業の当日は立ち会いも必要だ。「業者に頼まず、理事ができないのか」と聞かれたこともある。
5人の理事のうち、ほかの4人は仕事を続けていた。「退職した自分でないとできないことが多い」と感じる。
ただ、現状の負担はあまりに重い。
2回目の理事長になってすぐ、母親の介護問題も重なって体調を崩した。血圧が上がり、全身にかゆみが出た。
「自分たちで問題を解決しないといけないのはわかるが、『なんでも理事任せ』では困る」
建て替えや修繕積立金の値上げの議論が始まれば、負担はさらに増えると考えられる。10年後、また理事が回ってきたときに耐えられるのか――。
「土地の安い地方に引っ越し、中古の一軒家に住み替えた方がいいんじゃないか」
男性は、妻ともそう話し始めているという。
「理事会にお任せ」になりがちなマンション管理組合の運営。ほかの住民たちにも協力をえるために、できることはあるのでしょうか。記事の後半で専門家のアドバイスもご紹介します。
「理事の負担」も一因となり、実際にマンションを手放した人もいる。
「管理も修繕も自分たちだけ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル