森下裕介
大阪市淀川区のマンションの管理組合が社会福祉法人に対し、障害者のグループホーム(GH)として部屋を使わないように求めた訴訟の判決が20日、大阪地裁であった。龍見昇裁判長は、住宅以外の使用を禁止する管理規約に反するとして、GHとしての使用を禁止した。被告側によると、GHのマンション使用を禁じた判決は異例という。
日本グループホーム学会の調査(2018年度)では、障害者のGHは都心部を中心に約2割がマンションなどの共同住宅にあるとされる。判決がGHの運営に影響する可能性がある。
判決によると、法人は遅くとも15年以上前から、分譲タイプの15階建てマンション(251室)の2室を借りてGHを運営。障害者らが生活し、入浴や食事の介護、家事援助などの福祉サービスを受けてきた。
龍見裁判長は、自力での避難が難しい障害者らのGHがあることで、マンションは毎年、消防法令上の点検義務を負い、将来、消防用設備の設置に伴う金銭的負担も想定されると指摘。管理組合は、管理のあり方が変わらないように、部屋の用途を管理規約で住宅に限定していたとし、GHとしての使用は「(他の入居者らを含む)共同の利益に反する」と結論づけた。
管理組合側代理人の大砂裕幸弁護士は「マンションの共同の利益を考えて訴えたことを認めた正当な判決だ」とするコメントを出した。法人側代理人の藤原航弁護士は記者会見し「障害のある方が地域で暮らすために不可欠なGHが、マンションなどで軒並み使えなくなる悪影響をはらんだ判決だ」と述べた。(森下裕介)
識者「長い目で見れば『共同の利益』になる可能性も」
GHと地域社会に詳しい大阪市立大大学院の野村恭代准教授の話 判決は、マンションに防火設備などを備えることを「負担」としたが、他の住人も将来、認知機能が低下したり、歩けなくなったりするかもしれない。今から対策することが、長い目で見て「共同の利益」になる可能性もある。いま目の前にいる人を支えることが、あらゆる人が生活しやすい環境づくりにつながる、という視点を持つことも重要だ。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment