根岸拓朗
父が購入したマンションを相続した遺族が相続税を「ゼロ」と申告したところ、税務署が「伝家の宝刀」とも呼ばれる手法で、3億円余りの追徴課税をした。この課税が妥当かが争われた訴訟で、最高裁第三小法廷(長嶺安政裁判長)は19日、取り消しを求めた遺族の請求を棄却する判決を言い渡した。遺族側の敗訴が確定した。
問題とされたのは東京都杉並区と川崎市のマンション計2棟。不動産会社の代表だった男性(故人)が銀行から借金をして2009年に計13億8700万円で購入し、子どもたちが12年に遺産相続した。
国税庁の通達では、不動産の相続税を計算する際、土地の評価に「路線価」、建物に「固定資産税評価額」を使うとしている。遺族はこれをもとに土地と建物の価値を計約3億3300万円と評価した上で、銀行からの借金を差し引き、相続税はゼロと申告した。
「行きすぎた節税」vs「適用基準あいまい」
しかし、評価額が購入額より大幅に低いことなどから、税務署は、マンションの購入自体が相続税を回避しながら資産を引き継ぐ目的だったとみなし、「行きすぎた節税策で、ほかの納税者と著しく不公平になる」と考えた。
通達には、税務署が「著しく不適当」と考えた場合、独自に評価をやり直せるという例外規定がある。税務の世界で「伝家の宝刀」とも呼ばれるこの手法を使い、税務署は土地と建物の鑑定をやり直した。その結果、マンションが将来生み出す収益も見込めば評価額は約12億7300万円だと算定し、約3億3千万円を追徴課税した。
遺族は「マンション購入は父親の不動産業の経営効率を良くするためだった」「例外規定の適用基準があいまいだ」と反論し、追徴課税の取り消しを求めて裁判を起こした。一審・東京地裁と二審・東京高裁はいずれも、遺族の申告は「租税負担の実質的な公平を著しく害する」などと指摘し、追徴課税は妥当と判断していた。(根岸拓朗)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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