ショーの終盤、隊列は力強い音を奏でながら、前進した。全員の歩幅は62.5センチ。横一線、乱れはない。一番の見せ場「カンパニーフロント」の演奏演技にさしかかった。78人全員が笑顔だった。
11月21日、愛知県立木曽川高校吹奏楽部はマーチングの聖地・大阪城ホールで、全日本マーチングコンテストにのぞんだ。昨年は新型コロナの影響で中止となり2年ぶりの大会だった。8大会連続25回目の全日本出場。伝統の「一糸乱れぬ隊列」をこの大会でも披露した。
出場上限が81人と、マーチングは他の吹奏楽の大会に比べ大人数だ。それでも、部員が多い強豪私学などでは出場者を選抜することが多い。一方、木曽川高校は例年、部員全員が大会に出場する。
高校でマーチングを始める部員が多く、吹奏楽の初心者が入部してくることもある。その木曽川高校が全員での出場にこだわるのには理由がある。
練習を通じた技術の向上が部に団結力を生む。「毎年、大会の前後で、音がまるっきり変わる。遠くまでとぶようになる」。赴任10年目の顧問の木本昌光教諭は、そう説明する。
今年4月、フルートを担当する小笠原幸花(さちか)部長(3年)は「今年度の練習は、なんだか大変になりそう」と思った。入部した1年生の半数近くが楽器未経験だったからだ。同じパートの上級生が、つきっきりで楽譜の読み方、音の出し方を教えた。
マーチング初挑戦の1年生がマスターすべきことは、演奏だけではない。
歩幅は62.5センチ。
隊列を組み、移動しながら演…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル