投げる、跳ぶ、走るといった動きを取り入れた遊びで子供の運動能力を高める日本発祥のプログラム「ヘキサスロン」が注目されている。開発したのはスポーツ用品メーカーのミズノ。日本の一部小学校だけでなく、ベトナムに輸出されて来年秋にも義務教育に採用される見通しだ。子供たちの運動不足はベトナムでも課題になっているといい、解消の切り札として期待が高まっている。(高橋義春)
■ベトナム戦争の影響
ヘキサスロンはスポーツ振興策の一つとして、ミズノが平成25年に開発した。オリジナルの器具を使って運動が苦手な子供でもスポーツが楽しめるよう工夫してあり、これまでに国内の小学校91校が導入している。25メートル走やソフトハンマー投げなどのテスト項目で運動能力の向上が認められているという。
教育事業の輸出を進めようと政府が28年に立ち上げた「日本型教育の海外展開官民協働プラットフォーム事業」にも採択された。日本の教育システムに関心のある新興国の中でベトナムが導入に名乗りを上げた。
背景には、ベトナムの子供たちの運動能力の低さがある。ベトナムでは体育の授業時間数が少なく、内容も日本のように体系化されていない。特に小学校の校庭は狭いうえに、ベトナム戦争の土壌汚染から健康を守るために地面がタイルやコンクリートで覆われているという。このため軽い体操以外に満足なスポーツができない状況という。
■初等義務教育の学習指導要領に
ミズノはベトナムの小学生にも運動の喜びを知ってもらい、スポーツの裾野を広げようと、28年からベトナムの各都市でヘキサスロンのPR活動を展開。ハノイの小学校でプログラム種目を紹介したところ、児童らが歓声を上げて喜び、夢中になって体を動かした。
こうした実績が認められて、翌29年にベトナム国立教育科学研究所とヘキサスロンの実証に関する覚書を締結。昨年9月には、ベトナム教育訓練省が初等義務教育の新学習指導要領にヘキサスロンの導入を盛り込むことを決めたという。
同11月からは63都市の小学校126校でプログラムの実践が可能になった。同省のグェン・ティ・ギア副大臣は「ヘキサスロンがベトナムの小学生に実践的な利益をもたらし、小学校の体育教育やスポーツ活動の質の向上に貢献していくことを望んでいる」と期待を寄せている。
■「伝道者」も養成
ミズノは現在、ハノイやダナン、ホーチミンなどの主要5都市で約250人の「伝道者」を養成するワークセッションを実施。それをもとに同省が現場の教員への研修を担う約5千人の指導者育成を進めている。来年9月から約1万5千の公立小学校に順次、ヘキサスロンを導入していく計画だ。
今後は同省の幹部らが、プログラムを体育の授業に導入している奈良県橿原市の市立香久山(かぐやま)小を視察する予定。ミズノのアジアグローバルセールスマネジャー、森井征五さん(48)は「学校は大切な運動の場。子供たちの健康増進にもつながる運動能力や体力づくりの大切さをアピールし、ベトナム全土にプログラムを広めたい」と意気込んでいる。
■ヘキサスロン 運動能力測定と運動遊びを組み合わせたプログラム。名称はギリシャ語で6を意味する「ヘキサ」と競技の「アスロン」を組み合わせた造語。立ち幅跳び、25メートル走、ハードル走、空気を入れたビニール製のロケットとディスクの投擲(とうてき)、ソフトハンマー投げの6種目にちなむ。運動能力のレベルや得意・不得意な動作を確認し、運動遊びを通じてスポーツで必要とされる動きの習得につなげる。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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