白いシャツやパーカを着た、体格も国籍もさまざまなモデルたちが、ランウェーを歩く。服には地球が描かれていたり、カラフルな絵の具の中から漢字が浮き出ていたり。
9月24日、イタリアのミラノでこんなファッションショーが開かれる。時代の先端にいる世界のデザイナーが集う「ミラノ・コレクション」、その公式ショーの一つとして。
企画の中心を担うのは、後給鈴菜(ごきゅうすずな)さん(32)。「SUZU」の名で、パリ・コレクションやミラノ・コレクションのランウェーを歩くモデルだ。
広島出身。高校時代、バレーボールに打ち込んだ。ケガをしたときリハビリを助けてくれた理学療法士たちの献身ぶりにあこがれ、大学で療法の勉強にのめりこむ。
〈私、がんばらな、がんばらな……〉
完璧を追い求め、自分を追い込み過ぎた。大学に行けなくなる。重度のうつとパニック障がい、と診断された。
大学3年の春。過呼吸になりながら大学に行き、教授に言われた。
「ああしなきゃ、こうしなきゃと思ってやっていることを、全部やめなさい。自分のしたいことを書いて、1日1個、やってみなさい」
後給さんが書いた一つ目は、「スーパーでギョーザを買う」。家を出る。スーパーが近づくにつれ、呼吸が荒くなる。はうようにして売り場へ。ギョーザを手にレジに並ぶ。
私、買えた! 食べながら涙が止まらなかった。
アイスを買う、美容室に行く…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル