知力、体力、洞察力。今、マージャンの業界が熱い。マージャンといっても、世間一般が思い浮かべるものではなく、健康マージャン。ギャンブルとしてではなく、あくまでもゲーム。年齢層も高く、リタイアした人たちの憩いの場としても大いに盛り上がっている。また、生涯スポーツといった面でも注目を集めている。横浜・関内駅近くにある「雀こみゅ」では、平均年齢60オーバーの“雀士”たちが、日々熱戦を繰り広げている。(永井 順一郎)
マージャンといえば、映画にもなった「麻雀放浪記」が頭に浮かぶ。たばこの煙にアルコールの匂い。ピシ、パシと牌(はい)を台に叩きつける激しい音。生死をかけた戦い。まさに鉄火場。そんなイメージだった。
健康マージャン。正直、意味が分からなかった。地味な場所で静かに…。しかし、「雀こみゅ」の扉を開けた瞬間、その思いは覆された。250平方メートルを超えるスペースにマージャン卓が13。営利目的なら少しでも多くの卓を置くが、ここは違う。卓と卓の間も余裕がある。待合スペースも広く、雑誌の種類も豊富。この広さはぜいたくすぎる。ここは本当にマージャン荘かと思ってしまう。
見渡せば、ほぼ満杯の状態だ。年齢層は確実に高く(失礼)、女性客の多さには驚いた。黙々と打つのではなく、話しながら楽しく打っている。ゲームが終了するとトップの人に「〇〇さん、おめでとう」と他の3人が拍手を送っている。マージャンだが、スポーツマンシップを感じた。マナーの良さ、相手を思いやれる気持ち、これが健康マージャンなのだ。
代表の米丸祐介さん(35)は「17年の3月にオープンしたんです。最初の1か月は70人しか会員が集まりませんでしたが、今は1500人です。社会福祉というか、マージャンを通して元気になってもらえればと思っています。頭の健康、心の健康ですね」。照明にも気を使っている。年配者が多いため、28本だった既存の蛍光灯を倍に増やした。会員の男女比は、4対6で女性が多い。カルチャーセンターにパソコン教室があるように、マージャン教室も増えてきている。「デイサービスの一環として体の不自由な方も、リハビリで来たりします。片手が不自由な方でも、もう一方の手でマージャンはできますから」と米丸さん。会員の最年少は14歳。最高齢は91歳。賭けるものではないので、何歳からでも会員になれるわけだ。
週に2回は訪れる81歳の菅恵美子さんは「精神の浄化ね、これが一番。対戦することで緊張感を持てるし、それが情緒の安定につながっているの。だから負けても素直におめでとうと言える。もちろん、考えることによって、ぼけ防止にもなるわ」。週5回と常連中の常連、73歳の石井貴美子さんは「サロンみたいな感じ。フリードリンク制だから、ゲーム代金といってもお茶代みたいなもの(笑い)。プロと対戦する時もあるから、楽しくて仕方ないの」と少女のように目を輝かせていた。
ある福祉施設でもマージャンを推奨し、70歳を超えてからマージャンを覚えた人もいるという。「生涯スポーツだと思っているんです。年配の方も若い世代と交流することによって、刺激を受けます。それが成長につながっていくと思います」と米丸さんは熱く語った。
取材当日は「最高位戦日本プロ麻雀協会」の前山浩之(37)、神尾亮(32)プロも来店し、一般のお客さんと対戦した。「いい緊張感を持てます」と前山プロ。神尾プロも「刺激を受けますし、私たちがこういう場にくることによって、覚えてもらえる」。昨年からプロのリーグ「Mリーグ」が始まり、俳優の萩原聖人も参加し、一般の人にも受け入れられるようになってきた。「雀こみゅ」副代表の北見恵佑さん(36)が最後に言った。「eスポーツが五輪種目になるとか話題になっていますが、マージャンを五輪種目にしたいんです」。老若男女を問わず盛り上がっている今、北見さんの言っていることは夢物語ではないだろう。
◆健康マージャン
対戦中に「金を賭けない、たばこを吸わない、酒を飲まない」がモットー。年配者が多く、認知症・介護予防になると注目されている。
◆Mリーグ
競技麻雀のチーム対抗戦。2018年7月に発足し、現在は2年目。8チームで争われる。大手企業が母体となっている。
◆雀こみゅ
横浜市中区万代町2の4の5 関内山本ビル3階 TEL045・264・8570 営業時間は10時から19時※土曜日は21時まで。料金は3時間で1300円。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース