コンサルティング会社を経営する粂田智次さんは、10万円を使って何かをやりたいと思ったのではなく、10万円で“ある物”を売ろうとした。あまり聞いたことがない、珍しい体験だった。粂田さんが10万円で売りたいと思ったのは、実家の文房具店を閉店することに伴っての“在庫商品すべて”だった。
昭和に生まれた文房具店
店の歴史から語りたい。
京都市で印刷会社を経営していた父親が亡くなった後、当時大学生だった粂田さんは、母親と一緒に実家で文房具店を始めた。1981年(昭和56年)のことである。なぜ文房具店かというと、もともと印刷会社の得意先がかつての電電公社と郵政公社、さらに地元の市役所が中心だったことから、活版印刷の仕事と共に、オフィスで使う事務用品も扱っていたためだ。父の死去に伴い印刷業そのものは終えたものの、大量に仕入れた文房具は残っていた。夫が亡くなり元気がなかった母に生活にハリを与えるためにも、一緒に商売を始めることになった。
新品の文房具も廃棄物!?
新品の文房具も廃棄物!?
時は流れ、その母親も歳を取り、いよいよ店を閉めることを決意した2014年(平成26年)。実家も売却することになって荷物整理を始めた時に、最も多かったのが文房具の在庫だった。鉛筆、ノート、学習帳、ハンコなどこうした文房具の処分について不動産業者に相談したところ、思いもかけない言葉が返ってきた。それらの文房具の在庫は「産業廃棄物」と見なされ、廃棄費用は200万円から300万円かかるというのだ。
「まだまだ十分に使うことができる商品なのになぜ?」
納得がいかない粂田さんが、知人からのアドバイスもあって考えたことは、それらの文房具をネットオークションに出品することだった。九州にいる息子に手伝ってもらい、文房具の在庫リストを作るのに丸3日間、そして、ヤフオクに名乗りを挙げた。初期の入札金額は10万円に決めた。バラバラに出品したのでは大変な手間がかかるため、「一括10万円」とした。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース